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悪役の双子の弟になった  作者: もち


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19/22

19

 変わらない監禁生活。初めてここに閉じ込められた日から、何日経ったのかもう分からない。

 アランは相変わらずで、愛してくれたら解放するとしか言わない。冷たい態度で無視しても、変わらず俺からの愛を求める。気持ち悪いやつだとは思っていたが、ここまでとは……。

 学園にはサボることなく通ってるみたいだ。ならシナリオさえ始まってくれたら、俺から興味が無くなるかもしれない。……それがいつ訪れるか分からないから、希望的観測だけど。


「はぁ……ノクスがいなかったら気が狂ってた」

「流石にこれだけ監禁されてたらおかしくなりますよね」

「ねー」

「今日はどうされます?」

「今日は……勉強でもしようかな。この部屋はもう調べ尽くしてみたけど、脱出の手がかりはなかったし」

「力及ばず申し訳ありません」

「ノクスが謝ることじゃない。むしろ俺の方こそこんなことに付き合わせてごめん」


 俺の付き人じゃなければ、足に傷を付けられることはなかった。だからノクスが謝ることは何もない。アランの狂気に気づけなかった俺が悪い。


「いえ、俺はユウ様に仕えることができ本当に幸せですから。この状況も辛くはありません」

「ありがとう。ノクスの忠誠心は凄いね」

「いえ、俺のは忠誠心と言うよりは……その……」

「なに?」

「……孤児で食べるものもままならなかった、一人ぼっちの俺を救ってくださった方に恩を返したいだけです」

「そっか、じゃあなおさら俺から離れてシャルルの側に」

「いえ、俺はユウ様の側がいいです。この身が朽ちるまで、貴方様の側でお仕えしたいです」


 ノクスは膝まづき、俺の手を取って言う。


「俺の主人はユウ様ただ一人ですから」

「……そんなに気負わなくていいよ。自由に生きる権利があるんだから。それにシャルルの方が俺より主人に相応しいよ」

「いいえ、俺の主人はユウ様だけです。それが許されないなら、俺はまたスラム街に戻るだけです」


 ずるいな。そんなこと言われたら諦められなくなる。やっぱりノクスだけでもこの生活から抜け出させたくて、アランに打診しようと思ってたんだけど。これは受け入れてくれないだろうな。


「そっか、じゃあ一緒に頑張ろう……と言いたいとこだけど。もう手は尽くしたしこれ以上どうすれば……」

「そうですね。こちらからやれることはもうありませんし、後は信じて待つしかありません」

「待つって、もしかしてシャルルが来てくれると思ってるの?」

「はい、俺はあの方が助けてくれると信じてます」

「そっか……」


 複雑だ。俺はここから自由になりたいけど、それをシャルルには手伝って欲しいとは思えない。思ってはいけない。巻き込みたくない、自由に生きてほしい、天寿をまっとうして欲しい……本気でそう思ってるのに……。


「どうしても会いたい……」

「ユウ様?」

「ごめん、なんでも」

「誰に会いたいんだ?ユウ」

「っ!」


 突然、扉から声がして振り返ると信じられない人物が立っていた。


「シャ……ル、ル……?」

「久しぶり、ちょっと痩せた?」


 少し乾燥した手に触れられる。変わってない、いや少し大きくなってるし荒れてる。あの日小屋であった時よりも、男らしく大人っぽくなった気がする。


「シャルル様……」

「ノクスも久しぶり」

「お久しぶりです。申し訳ありません、あの日ユウ様を守ることができず……」


 ノクスはシャルルに向かって跪いて頭を下げる。


「謝罪は後で聞く。そんなことより時間がないから手短に言う」

「え?」

「ユウ今すぐ選べ、僕の手を取るかここに残るか」

「なにそれ……」


 差し出された手に戸惑う。突然現れてそんなこと言われても無理だ。シャルルが現れただけで混乱してるのに選べって……。それにこの手を取ったらアランは今度こそシャルルを……。

 無理だ。俺はシャルルを破滅から救うって約束した。だから俺が救われるなんてことは許されない。


「よく聞けゆう」

「な、に……?」


 不思議だ。同じ顔なのに全然違う人みたい。鏡で毎日、自分の顔を見てたし双子だから顔を見てなくてもずっと同じだと思ってた。だけど今は全然違う。だからかな、焦りとは違う感情で心臓が高なっている。


「僕は絶対に破滅しない。だからこの手を取れ」


 約束したあの日、最初に手を差し出したのは俺からだった。でも今はシャルルが差し出して助けようとしてくれてる。

 この状況を打破できるのはシャルルしかいない。そう俺の勘が告げているけど、アランを出し抜ける策がわからないから躊躇ってしまう。


「僕はユウを生涯愛すと決めている。だからどんな手を使ってでもお前を必ず自由に生きれるよう尽力する。誰にも尊厳を奪わせないから、僕を信じてくれ」

「シャルル……」

「ユウ、頼む」


 俺はシャルルを縛り付けたい訳じゃない。シャルルが俺のことを忘れて生贄にして生きても、絶対に恨み言なんて言わない。自由にはなりたいけど、シャルルが犠牲の犠牲で成り立つものはいらない。

 でも叶うなら……俺はシャルルと一緒に最期まで生きたい。どんな苦悩が待ち受けていても、ずっと側にいたい。誰にも隣に立つ権利を渡したくない。


「そっか……」

「ユウ?」

「俺、シャルルのこと好きみたいだ」

「ん?えっ!?」

「覚悟決まった。ここから連れ出してシャルル」


 真っ赤に染まるシャルルの顔。珍しい表情に場違いにも、可愛いなんて思ってしまったのは内緒だ。

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