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悪役の双子の弟になった  作者: もち


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「ここから出せ」

「イヤ♡」

「……」

「ユウも毎日毎日飽きないね。今日もそれで会話終了?」

「……」

「君の兄上のこととか気にならないの?」


 気になるに決まってるだろ。学園で孤立してないか、楽しんでいるのか気になって仕方ない。けど聞いてシャルルに危険が及ぶのは嫌だ。だからこいつには聞かない。会話もいつも通り最初の一言で終了。これ以上は喋りたくない。

 こんなことをしても無意味だって分かってる。でも少しでも反抗したいんだ。


「ユウ」


 優しい声色で名前を呼ばれる。壊れ物を扱うような手つきで髪を触られる。それでも反応はしてやらない。


「手錠と足枷外したいから、こっち向いて」


 誰が向くか。外されたって自由になる訳じゃない。足は繋がれたままで外に出ることも出来ない。それなら別にこのままでいい。


「ユウ」

「……」

「ねぇ」

「……」

「私は別に君を傷つけたい訳じゃないんだよ。君が振り向いてくれたら、この生活はすぐに止める。だから教えて欲しい。どうしたら君に好きになってもらえるのか」


 どうしてそんなに必死なんだ。誰かに愛して欲しいなら、愛してくれる人を選べばいい。アランは王太子な上に見目もいい。少ししか通えなかったが、学園でお前に好意を持っている人はたくさんいた。


「ユウ」

「俺はこんな風に脅して自由を奪うやつを好きにはなれない」

「……ごめん」

「……」

「これは君が好きになってくれるまで止めれない。だって止めたら君は……なんでもない」


 止めたらなんだ。


「ユウ好き、愛してる」


 アランはそう言いながら、腕をのばし俺を抱きしめる。

 愛の言葉なんか望んでない。俺は自由が欲しい。婚約者に選ばれてから十年、我慢した。シャルルを破滅させないためだ。会うのも我慢した。アランが最低限会うなと望んだから。

 シャルルのためにアランが望むことには応え続けた。


「俺は愛してないし、これからもお前を愛することはない」

「まだダメか……」

「まだも何も未来永劫お前だけは絶対にない」

「酷いなぁ」

「どっちが」

「まぁいいや。今日はたくさん話せて楽しかったよ」

「……」

「お風呂とご飯ノクスに用意させてるから、行ってきなよ」


 アランだけが持つ鍵で手錠と足枷を外される。礼は言わない。こんなものはしないのが普通なんだ。

 ベッドから降りてノクスが待つ隣の部屋へと向かう。

 閉じ込められているここは学園寮ではない。この部屋の内装は学園寮と全く同じだけど、風呂と食事を取れる場所は内装が異なる。

 最初は寮の部屋に閉じ込められてると思ってたけど、ここは王家が管理する土地のどこかなのだろう。

 それを敢えて教えず俺に気づかせるようにしたのは、俺を絶望させて諦めさせるためだろう。


「ユウ様」

「ノクス……また無理したのか?」


 痛々しい顔にできた傷に触れる。平然と立っているが、ノクスは俺がここに連れてこられた日に足の腱を切られている。

 日常生活に支障はないが、走ることと長い時間歩くことが出来なくなった。俺を抱えて逃げられないよう、アランがしたノクスへの枷だ。


「無理などしていません。散策していたら転んだだけです」


 ノクスはずっと外との連絡手段が取れないか探してくれている。不自由な足で無理して探すから、生傷が耐えない。


「……もういいから、無理をするのは止めて」

「無理ではありません。私はユウ様のためなら命など」

「やめて」


 ノクスの口を両手で塞ぐ。大袈裟に言ってるだけかもしれないが、そんな言葉聞きたくない。俺のせいで誰かの命が消えるのは嫌だ。


「……」

「俺は大丈夫だから。もう無理はしないで、これ以上ノクスからなにか奪われるのは嫌だ……」

「ユウ様……申し訳ありません」

「分かってくれたならいい。もう俺のために動かなくていいから。ごめん、こんなことに巻き込んで」

「そんな……!俺はあなたのお側にいれるだけで幸せです。だから負い目なんて感じないでください」


 手を握られながら言われ、胸が苦しくなる。忠誠心は厄介だ。ノクスが自分の利益を考えられる従者で、俺を裏切ってくれてたら……アランを道連れに死ねたのに。

 なぜ独占欲の強いアランが、ノクスを処分しないのか謎だった。でも最近分かった。

 ノクスは俺の心の枷だ。

 気が狂いそうな監禁生活。そこで俺が自殺しないよう、ストッパーのためにノクスを置いた。だから俺がノクスを解放しようとしても、アランはそれを絶対に許さない。だって居なくなったら、俺は死を選べるから。

 ほんと、気持ち悪いぐらいアイツは俺のことを把握している。


「ごめん、ごめんノクス……」

「……謝らないでください。今日はユウ様が好きな柑橘の匂いがするお風呂にしました。お風呂に入れば少しは気持ちが楽になります」

「うん……」

「だから泣かないでください。俺はどうなろうと貴方様が……」

「ノクス?」

「いえ、なんでもありません。行きましょうユウ様」


 差し出された手を取る。暖かいその手に、胸がじんわり痛くなる。

 この生活に終わりが来たらノクスを解放しよう。俺の従者なんかより、シャルルに仕えた方が幸せになれる。

 それが贖罪になるかは分からない。けど俺はノクスが望むなら何だって与えたいし、叶えてあげたい。幸せになって欲しいから。


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