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悪役の双子の弟になった  作者: もち


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sideアラン


世界は私のためにある。そう思わなければ手に入れることは出来ない。

初めてユウと会った時のことは今でも鮮明に思い出せる。あの出会いは運命だ。誰がなんと言おうと、あの時ユウに感じた強い欲は運命によるものだと。

そう信じていた。あの日、婚約を申し込みに行くまでは。


「今日ここに来たのは私の婚約者候補たちに会いに来たのだが、やはり私は君がいい」

「たち?」

「ああ、君の兄と弟も候補に入っていたんだ」


それはここに来るための口実だ。私は出会った時からユウと結婚すると決めていたから、本当は書面でも良かった。しかし婚約者を選ぶ口実がないと、会いに来ることが出来なかった。


「じゃあ会った方がいいのでは?むしろ会ってください特に弟」

「会っても決意は変わらないから会わない。俺は君がいいんだ」


君は運命だ。照れているだけでユウも私のことを運命だと思ってくれている。そう信じていた。ユウの双子の兄、シャルルが現れるまでは。


「そう言われても……あっ」

「お前、誰だ。僕のユウに何をしている」


シャルルが現れた途端、ユウの雰囲気は冷たいものから優しいものに変わった。緊張した面持ちは、花が咲いたような笑顔になった。警戒していた目は、愛しいものを見つけた慈愛の色が映っていた。

その瞬間、運命だと信じているのは私だけだと思い知らされた。

ユウの瞳に私が映ることはない。あの可愛らしい笑顔が私に向けられることはない。ユウの心に私が存在する隙もない。永遠に。

どす黒い気持ちが溢れる。私を見ないなんて許せない。私より奴を優先することは許さない。私を愛さない君は許さない。

幼い頃から叩き込まれた理性は容易に崩れ去った。代わりに生まれたのは身勝手で幼稚な独占欲。キラキラした恋は消え、ドロドロとした独占欲と支配欲だけが残る。


「なにが対等だバカバカしい。お前が対等であったことなんてないだろバカ王子」


感情的に言葉を吐いたシャルル。顔面蒼白でシャルルを止めるユウ。もう遅い。これで君は私のものになった。これで邪魔者は排除しつつユウを私のものにできる。笑いが止まらない。


そうして婚約者になって十年。王配教育も順調に行き、反対していたものは全て追い出した。誰にも邪魔させないよう、ゆっくり確実に地盤を固めた。なのに。


「……他にいい人が現れるかもしれないだろ」


どうしてまだそんなことを言うんだ。私はこの十年、君を幸せにするために二人だけの国を作るために努力しているのに。

どうしてまだ僕に心をくれないんだ。

耐え難い現実に、気が狂いそうになるのを必死に抑える毎日。

あと三年耐えれば名実ともに私のものにできる。籍を入れてしまえば、あとは時間をかけて心を手に入れる。狂った選択はユウを幸せにしない。大丈夫、時間をかければいつか必ず……。

そう信じていた。あの瞬間までは。


「ずっと愛している。気づくのが遅かった。アランに奪われたあの日、お前を愛していると気づいた」

「シャ、シャルル」


ユウを探しに来た時に偶然見つけた逢瀬。シャルルに告白されたユウは、私がこの世で一番向けて欲しい顔をしていた。

そこからの会話はよく聞こえなかった。ただ、すぐに返事はしていないことだけは分かった。でもそれも時間の問題だ。ユウは必ずシャルルを選ぶ。

あーあ、我慢してあげてたのに。こうなったらもう、君を監禁するしかないじゃないか。


「ふふっ、いくら愛する君と同じ顔でも兄上に手を出すことはないよ」

「そういう意味じゃない。危害を加えんなって言ってるんだ。俺はどうなったっていい、監禁だってなんだって受けてやる。だからシャルルは……シャルルだけは何もしないで欲しい」


君はこんな状況になってもシャルルを庇うんだね。傍から見れば美しい兄弟愛なのかもしれないけど、私にとってそれは反吐が出るこの世で最も許せない愛だ。




ユウを私のものにして数週間。誰もいない学園の廊下で、初めてシャルルから声をかけられた。


「お前、ユウをどこにやった」


王族に対する挨拶も無く、開口一番に聞いてきた。本当に不思議だ。愛するユウと同じ顔のはずなのに、私はお前が世界で一番憎くて仕方がない。お前を底辺まで叩きのめしたい、立ち直れないほどの屈辱を味わわせたい。


「僕の声が聞こえないのか?ユウを……」

「私の婚約者の名を気安く呼ばないでくれるかな?」

「……っ」


私に刃向かうだけのある。殺気を向けても平然としているなんて。ここで青ざめて逃げていれば、最期くらいユウに会わせてやろうとおもったが。やはりこいつはダメだな。


「ユウは今、僕のものになる準備で忙しくしていてね。ちょうどよかった。彼から君あての手紙を預かっている」


手紙を渡そうとすると、シャルルは私から奪い取る。すぐさま手紙に目を通すと。


「貴様っ……!ユウに何をした!」


私の胸ぐらを掴んできたシャルル。焦りと悔しさが混じった顔。そうだ私はお前のその顔がずっと見たかった。

どうだ?愛しいものを取られる気持ちは。永遠に手に入らないと思い知らされた気分は!私はずっとそれを抱えていた!十年間!


「なにをか。別に何もしていないさ、ただ私のものにする時期が早まっただけだ」

「アラン!」

「私の名を知っていたのか。呼ぶことを忌避していると思っていたが、見当違いだったか」

「ははっ……ご名答だ。僕は貴様が死ぬほど嫌いだからな。呼びたくないに決まってるだろ反吐が出る」

「奇遇だな。私もだ」

「……もう一度聞く。ユウをどこにやった。ここ数週間姿を見ていない。お前がなにかしたんだろ。教えろ」


隠し通せるとは思ってはいなかったが、王族相手に直球できたのは意外だったな。その点はユウに似ている……本当に忌々しいよシャルル。


「私が教えるわけないだろ。だがこれだけは教えてやる。ユウは私の元で幸せにする。だからお前は大人しくどこか異国でユウのことを忘れて生きろ。そうすれば命だけは助けてやろう」

「だれがそんな戯れ言を聞くか」

「ならば死ね」

「だれがお前に言われて死ぬんだ」

「……まぁ、今は頭に血が上って賢明な判断が出来ないだろう。時間をやる学年末までに決めろ。私が望む返事をしなければ、ユウの目の前でお前を殺す」

「はっ、言ってろ。僕はユウをお前から救う」


そう言い残し去って行くシャルル。本当に嫌いだ。お前のその姿は私を醜くさせる。

私だって本当はこんなことしたくなかった。ユウに心から私を愛して欲しかった。一番になりたかった。愛しているから大切にしたかった。

でも仕方ないだろ。気づいてしまったんだ。

永遠の片想いを。

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