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悪役の双子の弟になった  作者: もち


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16

「んっ……」


 酷い喉の乾きと共に目を覚ます。見知った寮の天井が目に移り少しほっとする。まだ覚醒してない頭をフル回転させ眠る直前までの記憶を思い出す。

 シャルルと別れた帰り道、ノクスと話してたらアランが来て。その後にたしか……強い眠気に襲われて……。


「ううっ……頭いったいな……」


 激しい頭痛に襲われ再びベッドに横になる。

 頭が割れるように痛い。思い出したいのに、これじゃあ何も思い出せない。なんでこんなに頭が痛いんだ。


「おはよう、ようやくお目覚めだねユウ」

「……アランか」


 声のした方を見ると、いつもの笑みを浮かべたアランが立っていた。


「体調はどう?」

「頭が割れるように痛いだけ。心配されるほどじゃ……は?」


 起き上がった途端、足に違和感を感じ布団を捲る。見るとそこには足錠がかけられていた。

 こんなことを俺に出来るのは一人しかいない。


「なんだ……これは……」

「ああ、気づいたんだね」

「……どうしてこんなものを付けたんだ?」


 あまりのことにパニックになり、思ったことをそのままぶつけてしまう。

 混乱している俺を見透かしているのか、アランは口角を上げ俺の肩を掴む。そして捕食者のような目で俺を見つめながら言う。


「どうしてって、君がまだ誰のものか自覚していないからだよ」

「どういう意味……」

「とぼけなくていい。私は全て知っているんだ。君が私との婚約破棄をのぞんでいること、兄上と秘密裏に会っていること、私のことを愛す気がないことも」

「……だからなんだ。そもそも立場上愛がないのは当然だろ。政略結婚なんだから」

「多く貴族はそうだ。だが私は君を愛している。君だけを想い、誰にも靡いたことはない」


 その言葉通りなら本当に厄介だ。なにがそんなにアランを盲目にさせているのか分からない。俺はただ……。


「だからってこの足はないだろ……」

「私も本当はこんなことしたくはなかった」


 足を撫でるアランに鳥肌が立つ。その仕草が気持ち悪い。


「ああ、やっぱり君は私のことが嫌いなんだね」

「……」

「残念だ」

「そう思うなら……!」

「もう君を閉じ込めるしかないようだ」


 そう言ってアランは俺の両手に手錠をかける。壊れ物を触るような手つきで。

 あまりの出来事に言葉を失う。


「大丈夫、私がいない間の保険だから。手錠はずっとはしない」

「外せ」

「いくら愛しい君からの願いでもこれは外せない。大丈夫、卒業までの我慢だから。正式に婚姻を交わした後に外してあげる」

「卒業までって……授業はどうするんだ!出席しなかったら退学だろ!」

「安心して、そこは私の力を使って問題なく卒業出来るようにしてあるから。君はここで私に愛されていればいい」

「そんなの……!」


 拷問じゃないか。嫌だ。せっかくシャルルに会えるのに、話したいことが沢山あるのに……。こんな状態で、本当に婚姻なんてしたら二度と会えなくなる……。まだ告白の返事だって考えてないのに。


「ああ、泣きそうな顔をしないでくれ。俺がおかしくなりそうだ……おっと、つい口調が昔に戻ってしまった」

「……」


 気持ち悪い発言に絶望は怒りに変わる。絶対にこんなやつの心を渡したくない。


「反抗的な目も素敵だねユウ」

「一つだけ約束しろ」


 アランの胸ぐらを掴んで引き寄せる。余裕な顔が本当に腹が立つ。


「なに?自由以外ならなんでも叶えてあげる」

「シャルルに手を出さないと誓え」

「ふふっ、いくら愛する君と同じ顔でも兄上に手を出すことはないよ」

「そういう意味じゃない。危害を加えんなって言ってるんだ。俺はどうなったっていい、監禁だってなんだって受けてやる。だからシャルルは……シャルルだけは何もしないで欲しい」


 縋るように願う。もうどうすればシャルルの破滅を防げるのか分からない。本筋となる学園生活が始まって、ノエルがまだ入学すらしてないのにこんな事が起こるなんて……。こいつの執着心を甘く見ていた。ここまでとは思ってなかった。

 だからと言って破滅から救うことを諦める訳にはいかない。こうなったら、何がなんでも止めてみせる。


「約束しなければ今ここで舌を噛みちぎって死ぬ」

「かわいい脅しだね」

「俺は本気だ」

「……分かった約束しよう。まぁ、そんなことをしなくても私は君が手に入るならなんでもいい」

「……」

「もちろん君の心も、ね」

「こんな事をするやつ誰が好きになる」


 忌々しげに手錠を見せる。まともな人は好きな人にこんなことはしないし、好きになる人はいない。


「そうかな?君は兄上と生まれた時から一緒だから好き。なら私と過ごす時間が増え、二人きりが当たり前になれば。君は兄上のことを忘れて幸せになれる。相思相愛になる日が楽しみだねユウ」


 うっとりした目で、アランは俺の頬に触れてくる。その狂気に染まった思想とありえない未来を見つめる目が気持ち悪い。

 だが我慢するしかない。シャルルのために。

 目を閉じグッとこらえる。大丈夫、シャルルのためなら耐えられる。この十年だって頑張ってこれた。それが一生になっただけ。大丈夫、大丈夫、大丈夫……。


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