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悪役の双子の弟になった  作者: もち


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 無事に入学式とオリエンテーションを終え、寮へとやってきた。多くの貴族が通う寮なこともあり、部屋は広いし送っていた荷物も開梱済み。

 ただ一点だけを除いて。


「なんでベッドが一つしかないんだ」

「え?」


 キングサイズのベッドが部屋のど真ん中に置かれていた。

 両端には机が置かれており、真ん中には部屋を仕切っていた跡がある。と言うことは、いくら二人一部屋とは言え、プライバシーを守れる配慮はあったわけだ。


「いくらなんでも権力を乱用しすぎだろ……」

「なんのこと?」

「ベッド!本当は一人一つだったんだろ!戻せ!」

「えーせっかく一緒に寝れるよう手配したのに……ダメ?」


 首をこてん、と傾けてキラキラ三割増で聞かれる。


「ダメに決まってるだろ!」


 ゲームなら一枚絵で表示されそうな顔で聞かれる。アランに憧れている人ならこの顔に惚れ惚れするんだろうけど、見慣れた俺からすれば腹立たしい以外の感情はない。


「今すぐ戻せ。無理なら俺はしばらくソファーで寝る」

「未来の旦那なのに……」

「まだ仮だろ」

「どうしてまだそんなことを言うんだい?私にとっては確定事項だと言うのに」

「……他にいい人が現れるかもしれないだろ」

「まだそんなことを言ってるの?」


 アランは俺の背後にある壁に両手を付け、俺を閉じ込める。至近距離にせまる顔が嫌で、逃げるように目を逸らす。

 さっきの言動はなぜかアランの地雷になっており、言えばいつもこうやって不機嫌になる。面倒だからいつもは面と向かって言わない。だけど今回は我慢できなかった。吐き捨てたくなるほど、されたことが嫌だった。


「そんなことって……」


 事実だろ。とは言えない。ゲームの知識があるとは言え、まだ起こってないことを言うのはおかしいから。


「私が浮気してるとか考えてるの?」

「……世継ぎが必要な立場なんだから、一人くらい相手がいてもおかしくないとは思ってる」

「それは何度も言ってるけど、私は養子を取る予定で君以外を相手にする気は一切ない」

「そんなの……周りが許すわけない。血を大事にしているやつがいるだろ」

「ああ、古い考えのものなら辞めてもらった。固執した考えをもつ者は私の国作りに必要ないからね」


 顎を捕まれ正面を向かされる。無理やり合わせられた目に光はなく、ドロリとした愛憎と執着の色が滲んでいる。この目、昔から苦手なんだよ……。


「あと何をすればユウは私の愛を信じてくれるんだ?学園の決まりも変えた、君に意地悪を言う王宮のものは皆、例外なく辞めてもらった。側室だって絶対に取らないと誓った」

「……いくらなんでも、あそこまでしなくても良かっただろ」


 数年前、あまりにもしつこく迫ってきた時があった。その時に俺は疲れていたこともあり、「どうせ心変わりする」と言い放った。その直後アランは笑顔から無表情になり、この世界で唯一王族にも効く契約書を持ち出してきたのだ。

 それは契約を破れば賢王でも王位を問答無用で剥奪され、国外に追放されてしまうこの世で最も重い契約。誰にも不履行には出来ないもの。それをこいつは「絶対に側室を取らない」と言う、大臣真っ青の契約書を俺に突きつけてきた。

 ……あの時のアランの行動力は怖かった。迷いを見せることなく即座に契約を交わしていたから。


「あのベッドだって君と共にありたいから置いただけ。君の許可が出るまで抱くつもりは一切ないから安心して欲しい。心配ならまた契約書を書くよ」

「……あんなものは一枚で十分だ」

「そう?私は君が満足してくれるまで何枚でも書けるよ」

「やめろ」

「じゃあどうすればいい?」

「部屋を戻せ」

「夜ぐらい君を側で感じたいだけなんだ」

「夜は一人でゆっくりしたいから嫌だ」

「……どうしてもかい?」

「どうしても……どうせ卒業したら一緒に寝なきゃいけないんだろ。学生の時ぐらい分けて欲しい」

「……分かった。さすがに今日中はもう無理だから、今夜だけ我慢してくれ。明日の夜には元に戻るよう手配する」


 そう言ってアランは俺から離れていく。聞き入れてくれて良かった。さすがに三年間同じベッドは嫌だからな。

 しかしここまで執着されると、あいつが本来の筋書き通り心変わりしてくれるのか心配になる。俺がゲームでのシャルルの立場にいるから、アランが心変わりしても破滅するのは俺だ。万が一心変わりしなくても、シャルルがエンディング後を自由に生きる分には問題ない。

 そう言い切りたいのに、どうにも胸騒ぎが収まらない。本当にこのまま俺が望む未来を手に入れることができるのか、不安と疑問がどうしても拭えない。


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