第1話:最初の魂
「これが今日の対象です」
管理官の声で現実に引き戻される。
目の前には、透明な容器の中に漂う小さな光の塊――魂があった。
「戦士の魂です。生前は国を守るため戦場に立った者。多数の傷と後悔を抱えています」
そっと魂を覗いた。自分にはどうやら修理対象の人生を追体験できる特殊能力を持っていたらしい。覗くと、光の中に戦士の記憶が流れ込んでくる。
戦場の轟音、仲間の笑い声、血の匂い、振りかざした剣の感触。
一瞬で、彼の人生が体験として押し寄せる。
喜びも悲しみも怒りも、すべてが鮮やかに感じられた。
「……こんなに重いものなのか」
管理官が淡々と説明する。
「亀裂、欠落、汚染。魂には様々な状態があります。あなたはこれを修復し、次の転生に回すのが仕事です」
自分は手を伸ばし、魂に触れる。光の塊が指先でざわめき、
まるで生きているかのように反応する。
その瞬間、戦士の後悔と怒りがぶつかってきた――
「俺は……もう一度戦いたいのか? それとも死にたかったのか……」
心が揺れる。だが、ここで手を引けば魂は壊れたまま、次の転生に回される。
青年は息を整え、深く頷いた。
「……やるしかない」
白い世界で、最初の修復が始まった。
光の中で揺れる魂に向かい、青年はゆっくりと、しかし確実に修理を開始した。