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社会問題エッセイ

4月から始まった「ライドシェア」とは“どのレベル”なのか? 今後の懸念点も含めて解説します

作者: 中将

筆者:

 本日はこのエッセイを選んでいただき誠に光栄です。


 今日は「4月から一部で解禁されたライドシェア」について僕なりの視点で語っていこうと思います。



質問者:

 具体的にどういう形式で4月8日から解禁されたんですか?



筆者:

 まず定義からですが「一般ドライバーが自家用車を使い有料で乗客を運ぶ」というのを今回の「ライドシェア」とします。

 ライドシェアの定義もまちまちなので定義しないと何のことなのか分からなくなりますので……。


 「ライドシェア」の中で、「一部白タク解禁」という表現の方が適切と言えますね。


 また、「タクシー相乗り」は今回全く“含まれていない”ことを抑えておきたいところですね。


 そして、以下のような基準で解禁される運びとなりました。


・1種免許による新採用は過去2年間の無事故が条件


・対象区域として東京23区、東京都武蔵野市、三鷹市②横浜市、川崎市、神奈川県横須賀市など③名古屋市、愛知県瀬戸市、日進市など④京都市、京都府宇治市、長岡京市など。原則、ライドシェアはこれらの区域外への移動はできない。


・実施主体をタクシー会社としたドライバーの管理

 

・車両にはタクシーと同水準の任意保険がかけられる(タクシー会社が管理するため)


・「GO」や「S-RIDE」といったアプリを使って配車する方式で、流しのタクシーを拾うように走行中の空車を捕まえて乗ることはできない。


 このような要素が主要なものがあります。


 

質問者:

 これについてはどう評価されますか?



筆者:

 まぁ「55点」です。ギリ不合格点というところです。


 プラスの面はタクシー会社が責任を担保し保険加入も行う事から、

 責任の所在が明らかになっています。

 僕が一般車タクシー解禁で一番懸念していたタクシー乗車のリスクというのは大幅に軽減しているといって良いでしょう。


 しかし、そもそもの話単にタクシーのハードルを下げてタクシーの台数を増やすという方法で「一部地域のタクシー不足」を解消するという方向性が間違っているように思うんですよね。



質問者:

 どうしてでしょうか?



筆者:

 安全性とトレードオフでタクシー台数が増えるという事態になるわけですからね。


 現在一種免許で無事故の方も慣れているところや高速を走行しているから、事故を起こしていないだけで、狭い道や未知の場所を走行したら事故のリスクが上がりますからね。


「ゴールド免許」でも「ペーパードライバー」の方もいるのであまり「2年間無事故」というのは保証にはなりません。


 実際に海外の白タク解禁のライドシェアではタクシー業界全体の事故率が1割も上がったということもありますので、お客さんだけでなく歩道を歩いている人すらもリスクに晒されるわけです。


 また本当に不足している地域と時間帯なら問題は無いですがあまりにも供給過剰の状況になりますと、給料の低下と言った恐れも起きてきます。



質問者:

 そうなると、「白タク解禁」以外ではどういう「タクシー不足」の問題解決方法があるんでしょうか?



◇AIの開発とモラルの醸成が必要



筆者:

 タクシー業界の収益と言うのは、歩合制を前提とするのであればタクシー運転手の労働時間の中でどれぐらいお客さんがいるか? という「実車率」で決まってくるんみたいなんですね。


 実車率の平均は40〜60%が平均的な数字となっているのですが、

 実車率が50%を下回ると輸送効率が悪いと言われているので本当にギリギリのラインでタクシー運転手さんは戦っていると言えるんです。


 こうなると実車率が皆が7割とかになるだけでも大分収入が変わってきますし、

 タクシーが捉まりにくい現象と言うのも大きく軽減されることが予想されます。



質問者:

 そうなると実車率を上げる工夫が大事だと思うんですけどどうしたらいいんでしょうか? 今の配車アプリではダメなんですか?



筆者:

 現状も配車アプリなどがあるんですけど、どうして効率化されていないのか? と言いますと、タクシーの営業範囲以外で降ろした場合、その地域でお客さんを乗せることが出来ないんですね。


 例えば東京都に所属している場合、神奈川県でお客さんを降ろすと、帰り道は東京都に戻るまでお客さんを拾うことが出来ないのです。

 こういった「ロスの時間」というのが遠距離運送だと起きてしまうために配車アプリを乗車する方が最大限活用したとしても「実車率の最適化」することが不可能なのです。


 これは、営業の線引きをしなくてはお客さんの取り合いになってしまう上に、所属先が東京都など大都市の人が圧倒的に有利になってしまうため、地域差をなるべく小さくするためのルール作りとなっています。

 これは現時点では必要なルール作りだと僕は思います。


 そのためにより実車率を上げるためには、県の線引きを無くす代わりになるべく平等にタクシーに仕事を割り振るような最先端のAIを作り、それをタクシー利用者のほとんどが利用し、それに確実に従うだけのタクシー運転手のモラルなどが大事になります。



質問者:

 なるほど、境を取っ払ってモラルのない客を取る行動をしたら損をしてしまう方が出ますからね……。


 それで制度自体が無くなるとみんなが損をする

 ゲーム理論の「囚人のジレンマ」みたいな感じになりそうですね。



筆者:

 上記のような要素を加味すると、実を言うとタクシー運転手は短距離を嫌うのですが、現状では短距離で実車率を上げる方が初乗り代金の都合上有利になるという状況なんですね。


 次に配車アプリの運転手を評価するシステムが現状もありますが、これを拡張して“利用者側も評価される”という事が大事だと思います。


 お互いに評価をしあうことによって乗る方も配車する側も比較的安心することが可能になり、マナーの悪い者を排除することが可能になります。


 アプリの指示に従わない配車側もマイナスになるような評価方法も必要かもしれませんね。


 

質問者:

 以前無人のライドシェアのためには自動運転が欠かせないというお話もありましたがそれについてはどうなんですか?



筆者:

 ちょっと難しいかなと言うのが正直な感想です。


 24年2月にデューク大学のパジッチ准教授らが開発したMadRadarは自動運転車に搭載されているレーダーセンサーを騙し、他の自動車が接近していることを隠蔽したり、何も存在しない場所に「幻の自動車」が出現したと錯覚させたりと自動運転車を攻撃する手法を公開しました。


 ようは、サイバー攻撃に磁場の乱れによって安全な運転が一瞬にして崩壊する可能性があるのです。


 これは、サイバーテロや偽情報の攻防と同じように「イタチごっこ」の様相を呈するので「自動運転で安全」と言う状況は作り出しにくいように思えます。


 アメリカのカルフォルニア州では先進的に完全無人の自動運転タクシーがアルファベット傘下のウェイモの営業が23年8月から開始されています。

 しかし、自動運転車による事故が度々発生し、安全性などに懸念の声が出ており、車両を狙った悪質ないたずら事件も相次いでおり、24年2月には反対派から破壊されて炎上する事件まで起きました。


 このように、完全自動運転配車サービスよりはAIによる「配車の完全管理」の方が安心・安全を実現しやすそうです。

 こちらも「モラルの問題」のような気もしなくも無いですがね。



質問者:

 なるほど……。無人だと儲かりそうな気もしますけど、壊されちゃったらお話にならないですね……。



◇今回の施策の不安な2つの行く末



筆者:

 さて、話を今回一部解禁の日本のライドシェアに戻りまして、

 今回の4月8日以降の動きは成功するかしないかで言ったら「短期的には成功する」と思います。


 タクシー会社が管理することから、リスク面は軽減されていますし、母数が増えることから「タクシー不足」は解消されるでしょう。


 しかし2つの懸念点が残ります。



質問者:

 どういうことが懸念なんですか?



筆者:

 一つは今回の「ライドシェアが成功した」と言うイメージ作りのためのちょっとした規制緩和から、リスクが非常に高い大規模規制緩和に移行することです。


 特にタクシー会社に紐づけない一般車両ともなればどの程度の保険かもわかりません。責任の所在も分からなくなりますし、本当にとんでもないことになりかねません。


 このように「ライドシェア」と一口に言っても色々と幅があるにもかかわらず十把一絡にしてしまい、議論を集約化させてしまうことです。


 プラスのイメージ戦略のために行っているのではないか? という懸念です。


 政府と言うのは入り口は優しくして徐々にきつく締めあげて外資を入れたりしていく戦術がお得意ですので気が付けば外資ウーバーなどがタクシー業界をも席巻している可能性もあります。


 ちなみにウーバーは世界的にはタクシーの質を下げており抗議活動も多くなっています。



質問者:

 なるほど……国民の心の障壁を下げたいわけですか……。



筆者:

 もう一つはライドシェア以前に「外国人が2種免許をとりやすくなる制度設計」になりつつあることです。


 24年3月29日の閣議決定で「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」等を一部変更し、いわゆる外国人労働者の受け入れ上限数を緩和し、「特定技能1号」資格の外国人材を拡充を図っています。


 これにより、バスやタクシーを含む「自動車運送業」全体として、今後5年間で2万4500人を上限に外国人の職業ドライバーを受け入れるとしています。


 それに先立ち23年12月24日に警視庁は2種免許の試験を20か国対応にしようとしています。



質問者:

 標識って日本語以外ですと、アルファベットせいぜい韓国語があるかないかという感じなのに、そんなことして大丈夫なんですか?



筆者:

 これまで2009年に英語が加わってからちょっとずつ言語が増えていったようなんですけど、2種の免許を持つ人は昨年末時点で全国に88万536人のうち外国籍の人は5189人で、全体の1%にも満たなかったようです。


 しかし、これからは制度設計上で見ても積極的に二種免許を取らせに行く方向性ですから間違いなく質は下がると予想されます。


 これは、二種免許の質を事実上の試験軟化で下げることで、「二種免許も一種免許も変わらなくね?」状態にして大規模緩和的ライドシェアを推し進めやすくするということです。


※現状一種免許は先んじて20か国対応になっています



質問者:

 怖いですね……。



筆者:

 ライドシェアは上手くいけばタクシー運転手さんの収入の増加、利用者も大幅改善につながりますが、今のところは懸念点が多く、文化やモラルも異なる外国人も入れば更にリスキーになっていくと思います。


 配車アプリを改良して「マズイ評価の人」を減らしていけるような形になればこれらの問題の多くを解決できると思うので、そのあたりを期待したいですね。


 ということでここまでご覧いただきありがとうございました。


 今回は4月8日から始まった「一部地域のライドシェア解禁」についてはタクシー会社が責任を持つ要素があるのでリスクは低いものの、今後を考えるとやはり警戒していかなくてはいけない。

テクノロジーやマッチングシステムのさらなる向上に期待したいということをお伝えさせていただきました。


 今後もこのような時事ネタや政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。


※ちなみに「相乗りタクシー」については21年11月から解禁が始まっていますが、運賃は安くなるもののマッチング率が悪いことやストーカーのリスクもありあまり流行っていないようです。

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