王子様✕お姫様=都合の良い夢を見る
よろしくお願い致します!
「ランハルト様。貴方の地位を頂きに参りました。どうか『王族試し』をさせていただきたい!」
闘技場に集まった人だかりがわっと叫ぶ。エルドラの人々の主な娯楽と言っても良い。
『王族試し』それは、エルドラにおいて古くから行われていた儀式である、王族に不満があるものは決闘を申し込む。挑戦者は王族を殺せば勝ち、王族は挑戦者を傷つけることなく負けを認めさせれば勝ち。挑戦権は一度きりで勝ったほうが王太子の座を手に入れる。
「いいだろう。」
父は恭しく、その腰の短刀をー竜が巻き付いた金の宝刀を王座に置く。
「ギルド、見ていなさい。」
ギルドは赤子の指で、父の人差し指を握り『あー』と喋った。
平で柔らかな土の上に円が描かれていた。挑戦者は肩を怒らせながら刀を正眼に構える。対する父は、武器を持たず空手を握る。
「始め!」
ギルドを腕に抱いた母の合図で、挑戦者の真剣が振り上げられる。だが、その僅かな合間に父は間合いに飛び込み剣を奪い、回転し、挑戦者の喉元に突きつけた。
挑戦者は膝を付く。降参の意思だ。
「勝負あり!」
母が叫んだ。
「あーー!」
なんだか嬉しかったのか、赤子のギルドもつられて叫んだ。
「元気なお子様ですな。」
挑戦者は悔しさなど微塵もなく、くったなく笑った。
「私のところの娘息子もしごかねば。貴方の息子よりも強くなるようにね。」
「そうか、確か双子だったな。ニュクスとシリウスだったか。」
父は挑戦者に長剣を返し、汗を拭った。
「まぁ、うちのギルドも最強になる予定だからな。」
「あーー!」
ギルドは楽しそうに笑う父に手を伸ばしてにこにこ笑った。父は抱き上げてくれ、高い高いをしてくれる。
「きゃきゃかゃっ!ぷう!」
「そうかそうか、楽しいか!」
父はギルドを放り投げる。宙に浮いた感覚がまた楽しくて、きゃっきゃと騒いだ。
人の背丈ほども赤子のギルドを放り投げる父を見て、挑戦者は呆れ気味に唸った。
「負けてしまったものは仕方ありません。貴方様に忠誠を誓います。」
その言葉通り彼は忠義を貫いた。城が落ちたときもギルドを逃がしてくれたのは彼だったから。でも、ギルドはその手を振り解いて一人で逃げ出した。
「ああ、頼りにしている!」
くったなく笑う父の顔が滲んで消えて、ギルドの人生のまた別の場面に飛んだ。
どの王国にも王族のみに付与される高度な魔法がある。
エルドラは文化の島国と呼ばれる、山に囲まれた場所だ。鉱山からは大量の金や希少な石が採れる。彼らは狩猟採集民族であるが、山に住む動物や外敵から身を守るため戦闘部族としての顔を持ち合わせる。
彼らの生活が一変したのは、切り立った山の一つが崩壊し隣国へ続く道路ができた時。エルドラの檻であり盾は簡単に崩れ去った。狩猟より効率のいい農耕、中央集権的な社会制度、社交的で儀礼的な立ち振る舞い、大量消費文化。魔法。
エルドラの長は賢く立ち回る。直ぐさま体裁を整えると、隣国との親密な関係を結ぶためエルドラの国王を名乗る。近隣王国とも良好な関係を築いた。
ギルドの隣に座った父は、歴史の本をそっと閉じる。
『理解できたか、ギルド。大切なことは誰がしたかではない。いつどのような判断を下したか、だ。長たるものの価値はそれで決まる。ギルド、次はお前がこの国の舵を取るんだ。』
ギルドは殊勝に頷いた。扉が開いて、お茶とお菓子を持ってきた母が微笑んだ。黒髪に黄金色の肌、ギルドが受け継いだ靭やかな体躯。ゆったりとソファに座れば、ドレスのラインから外れ大きく膨らんだお腹が目立つ。
『そうですよ、ギルド。ところで、ランハルト様?お腹の子にはどんな名前を付けるのですか?そろそろ臨月、お決めになって頂かないと。』
母上が大きくなったお腹を擦りながら、おっとりと父を見上げる。隣の父は厳格な顔を緩め、そわそわと膝を両手で何度も擦った。王族にあるまじき挙動不審具合はまるで、お菓子を選ぶ子供のようだ。
『そ、そうであったな……むむむっ、えっっとそのぉ……最高の名前を付けてやりたいから……』
父は辞書かと思うような紙束を掴みだしたが母がすぐ取り上げる。
『ギルドのときも言いましたけど、迷って全部付けるのは駄目ですよ。』
『うぐっ……こうなれば!』
父は表音文字が書かれたプレートとサイコロを取り出す。
『始祖神に全てを委ね……』
『駄目です。仕方がありません、ギルド、こちらにいらっしゃい。』
ギルドは勉強机から離れると、父と母の間にちょこんと座った。優しく微笑む母はギルドの片手を握ると、腹に触らせる。
『あなたの妹か弟の名前、考えてくれませんか?』
ギルドは任されたことが嬉しくて、ぱっと顔を綻ばせた。前々から考えていた秘密の名前があったのだ。
『えっと、弟だったら、ゴールド。きらきらしててきれいだから!』
『あ、あら、素敵な名前ねギルド……』
両親が微妙な顔をしたのにこの時は気づかない自分、少しだけ苦い思い出だ。
金を生む土地を誰も欲しがらない訳がない。山の崩壊より五十年後、この記憶の一ヶ月後、民主制を謳う新興国ラジアがエルドラに攻め込んだ。
『妹だったら、リ……』
ギルドは、この時母のお腹越し、手のひらに感じた兄弟の名前を、知らない。
『『リ……?』』
もう永遠に、分からない。
景色が暗転し、そっくりな顔で続きを待つ両親が消える。夢の終わりだ。
『待って、待ってよ……!』
分かっていながら、ギルドは妹とは違う名前を叫んでいた。
『……リリアナ……!……どこ……!』
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冷たい岩を肩の下に感じる。ギルドは目を覚ますと隠密魔法をすぐに発動し、状況を確認した。現在、未施錠の牢の死角に無造作に寝かされている。黒装束なこともあり、牢の外からは気が付かれにくい。
ギルドが目を細めると、追跡スキルが作動する。牢屋の中、痕跡の具合から、ギルドを移動させたのはリリアナ。
(いつの間に?俺はちゃんとリリアナを捕まえていた。両手で、しっかり。)
思い出すのは月の銀の光を浴びるリリアナ。
ギルドは格子窓から差し込む月の光を検分しゆっくりと目を細めた。月の角度、欠け具合からして、リリアナと別れてから一日弱が経過していることになる。
どうして手を離したか、眠くなったのはあの歌を聞いてからだ。
「やりやがった……あの女!」
廊下へ飛び出した。だが、リリアナの牢はもぬけの殻、彼女の痕跡は牢の更に奥深くまで続いている。セノイの痕跡と一緒に。
ギルドはすぐさまその痕跡を追って地下へ駆け出す。真っ暗闇の中、手探りでリリアナの気配を探り当てた。暗闇でぽうと光る魂の色、彼女で間違いない。ギルドは隠密魔法を解き、ベルトの袋から魔石を取り出した。暗闇を黄色の光が退ける。
「リリアナ……」
「来ないでって言ったじゃない!」
リリアナの目だけはギラギラ光る。傷一つ無かった身体には、殴打痕が幾つもあり、吊るされた手錠に両手が嵌まり、肘から滴った血が石の上に溜まっていた。罪人の焼き印が白いワンピースの裂け目から覗く。痛みで歪んだ顔には、余裕の表情すら浮かべられない。
覚悟をしていたとはいえ、動揺から魔石が滑って岩の上を跳ねる。致命傷にならないように器用に場所を選んで行ったのは、ギルドの悪友セノイで間違いない。
『復讐など考えてはいけない!命を粗末にするな!』
ギルドは父の気持ちを初めて理解出来た。失敗した復讐など、虚しいだけで得られるものは何もないからだ。
「リリアナどうして……復讐なんか考えた?」
リリアナの鎖がジャリッと鳴って、鉄が手首の傷口に喰い込む。リリアナの演技の仮面が剥がれ、彼女はギルドに食って掛かった。
「引き返せないの。解る?漆黒のハイエナ、ギルド!王子の魅了のせいで母は死んだ!殺したのは母の罪を認識した全ての貴族!復讐をして何が悪い!!」
自分勝手な言い分だ。そう思うギルドもまた、隠していた本音に火を付いた。
「……けんな、ふざけるな!『王子が嫌い』、『恋をしてみたい』ガキみてーに甘ったれたことばっか言ってたじゃねぇか!!『自分が死ねば全て片がつく』?つかねぇよ!逃げんじゃねぇよ!!」
「逃げてなんかない!これはゲーム、私自身をも駒にして望みの世界に誘導するだけの。……あんたに関係ない!私に構わないで!もう迷わせないで!あんたの顔見るだけで腹が立つ!」
「はっ。」
殊更低い声でギルドが唸った。
「俺もお前を見ると腹が立つ。俺は、俺なんか、俺の兄弟は生まれる前に殺された!ち……親父の仇、お袋の仇。爺ちゃん婆ちゃん、支えてくれた皆、みんなみんなみーんな殺された!真っ赤に血を吹いて、死んでからもなおばらばらにされる!散った肉片を鳥が食べに来る、埋葬も出来ない!ラジアが鉱山で働かせるために男を連れて行く!女を攫ってやりたい放題!火をつけられ、焼かれる街!エルドラは奴らに滅ぼされた!!」
『復讐など考えてはいけない!』
父の言葉を忘れたわけではない。しかし、ギルド自身にもその感情を止めることは出来なかった。積年の思いをたまたまそこにいたリリアナにぶつける。紫の目は、怯み、わずかに潤んだ。
それでも、邪険に扱うことなく耳を傾けてくれるリリアナ、ギルドはありったけの激情を地下牢に響かせる。
「殺してやる!全員!殺してやる!!思い知れ、エルドラを、俺の国を舐めるんじゃねぇ俺を舐めるんじゃねぇ!!消えろ!ラジアの守銭奴が!いつか必ず追い詰めて、命乞いをさせてやる!したとしても許さねぇ!!惨めに這いつくばるのを見ながら、ゆっくりじっくり殺してやるんだ!!!
……けど親父が、復讐するなと……してはいけないと……生き延びろって、俺を逃がす時にそう言った。……だから、復讐が間違ってなきゃ、俺が生きてる意味が無くなる!!!」
「お父様がそう言ったから、今の貴方がいるの?」
同情の視線を寄せるリリアナが、自分で考えて思うままに行動すればというリリアナが、鬱陶しい。復讐を考えはしても実行に移していない、その違いがギルドをギルド足らしめているの。彼は得意の身体能力を活かしてリリアナとの距離を一瞬で詰めた。背後の岩に手を掛け、有無を言わせぬ圧をかける。
「もう逃げない。これは俺が仕掛けたゲームだ。俺が正しくてお前が間違っている。親父の言い付けを破ってでも、俺は親父が正しいことを証明する。自分の為に。」
リリアナの眼前で短刀を抜いて、ギルドは自分の指先を傷つけた。
「何する気なの?やめなさい!」
エルドラ王族の血に含まれる魔法をリリアナの額に押し付ける。ギルドが家族の夢を見られるのは、この魔法のお陰だ。
「今からお前の記憶を穿り返す。過去の自分に聞いてみろ、お前の母親が復讐を望んでいたかってな。」
記憶は必ず抜け落ちていく。ギルドか十年以上前の約束を一言一句違えずにいられたのは、この魔法があったから。辛いとき支えてくれたのも、復讐心を捨てられないのも、全て。
カツン、カツンと規則正しい音が二人の耳に届いた。かなり近くの廊下を歩く軍靴、ということは先程の言い争いを聴いていた可能性もある。リリアナは蒼白になり、肩でギルドを押し退ける。だが、ギルドは聞き入れる素振りを全く見せず、リリアナの額についた血に魔力を込めた。他人にこの魔法を施すのは初めてだが、きっと上手くいく。
カツン、カツン。足音は近づいてくる。
「ギルド足音!逃げ」
「『夢開き、胡蝶の舞』」
金色の光がリリアナの額に迸る。光が収縮すると同時にリリアナの瞳が光を失った。夢の世界に引きずり込まれたのだ。
牢の出入り口が封鎖され、その張本人が姿を現した。
「ギルド……か。出来ればお前であって欲しくないと思っていたよ。」
セノイの声。
ギルドは振り返り、階段の上の悪友を見上げた。血溜まりの中の魔石が保安局室長を照らしている。彼は牢の仕切り戸に背中を凭せ掛け、がりがりと頭を掻いた。手の中で鳥の形の通信メモが暴れる。
「望みの報酬出すからリリアナの仲間捕まえて来いって、いつもと違って仕事が遅すぎるから通信メモ送ったんだけど。まさか牢の結界に入れずばたばた暴れているのを目撃することになるとはねぇ。こりゃ仕事が遅くなる訳だ。」
事もなげに言うセノイに、ギルドは眉を顰めた。
「通信メモ……聞いてねぇぞ。」
ギルドは腰の袋の一つを探り、魔力を帯びた1枚の金貨を取り出すと適当に放り投げた。
鳥の形の通信メモはぱたぱた飛ぶと床に落ちた金貨をつつく。金貨は勿論、セノイが渡したものである。
「発信機付けるとか、マナー違反にも程がある。」
「……残念ながら保安局長ってのは飾りの肩書じゃないんでね。」
セノイは一度目を伏せると、百戦錬磨の微笑みを浮かべ階段に腰を下ろした。余裕げな物腰と芝居がかった口調は、まるでギルドをからかっているかのようだ。
「先に俺の立場を述べておこう。俺はギルドの友である前に保安局室長だ。
で、その女は同情の余地ありとはいえ罪人。庇うならお前も同罪ということになる。
……こういう言い方は語弊があるな、言い直そう。その女だけは止めておいた方がいい。ファム・ファタールって知ってるかい?」
乗せられてはいけない。彼も嘘八百を吐く男、内容を吟味するだけで危険であると、昔の王子教育が告げてくる。だが、セノイの声は心地よくギルドの頭の中に響く。
「『男を破滅させる女』。その娘はレンタル婚約破棄の首謀者。五年以上も保安局を欺き続けた、星の数ほど嘘を吐いた女。たった数日一緒に居たからといって、信用してはいけないと思うよ?何か色々あったみたいだけど、全部演技かもしれないしね。」
セノイはギルドに物理では決して敵わない事を知っている。故に話術に持ち込み、ギルドの胸中にリリアナへの猜疑心を植え付け、煽る。セノイは王国三柱の一角を担う、銀の勲章を持つ者。
「だったら何のために嘘を?」
お前がリリアナの何を知っているんだと詰問したギルドに、セノイは敢えて力を抜いた。ギルドは揺れている。質問は話を聞いている証拠。正念場であるのは間違いないが、力むと獲物を逃すのを知っているからだ。
「一緒に死んで欲しかったとか、最期に男を弄んでみたかったとか、理由になりうるものなら幾らでもある。ま、それほど彼女を信じているのなら、オレも止めない。恋は人を盲目にするからな。」
「恋……。」
「そう。だけど信じるには覚悟と代償が必要だ。その娘に王国全体を敵に回す価値があるのかい?本当にその娘を信じていると言い切れるのかい?」
ギルドはセノイの言葉を受けてリリアナを振り返った。彼女を信じているか?恋をしているのか? 否だ。リリアナは嘘吐きで、事あるごとに足を掬われる。ではセノイを信じるのか? ……答えは否。ギルドは小さいナイフを取り出しセノイに向かって投擲した。
セノイは余裕を持って仰け反る。小さなナイフは石壁に当たり、発動途中の魔術式を浮かび上がらせた。一瞬蛍光して、掻き消える。
「音声の転送魔法、だろ。お前の目的は仲間を呼ぶための時間稼ぎってところか。」
セノイは肩を竦めて首を傾ける。まだ余裕があるのか、足まで組み始める次第だ。
「おやまぁ。ばれちゃあしょうがない。で、どうする?」
膠着状態となった牢で、鎖の音が揺れた。リリアナが気がついたのだ。
「……私……。」
俯きがちの彼女を、ギルドははやる気持ちを押さえて観察する。
「……私、おばあさまに謝らないと。酷いことをした。だって、知らなかった。私の事疎んでいらっしゃるとばっかり……ッて、保安局員に見つかっているじゃない!」
セノイを見て慌てふためくリリアナに、ギルドはそうだね。と背中越しに小さく応じた。
「俺とあんたは一蓮托生。お前が行くなら地獄にだってついて行く。このまま二人で逃げるか死ぬか、好きな方を選べ。」
ギルドはリリアナにそう告白する。
リリアナは長く息を吐いた、そしてきらきら輝く目で振り向いたギルドを見る。
「……今の私に、復讐の意思はない。」
ギルドは覆面の下でにやりと片頬を上げた。
ゲームに勝ったと確信したから。
歓びと共に、握っていた短刀でリリアナの足錠を切り裂く。手錠もバターを切るような感覚で外す。彼女を担ぎ、短刀をセノイに突きつけた。
「邪魔しないで行かせてくれ。」
セノイは自分の爪を見ながらどうでもいいように答えた。
「出来ない。……だが、たった今から俺はお前の敵だ。逃げ切れるのを祈っているよ。」
ギルドはひとつ頷くと牢を飛び出す。
肩に担いだ、リリアナに勝った。
ギルドを国から逃がした、父は正しかった。
それは悪友を失っても、この国を敵に回しても、なお余りあるものだった。
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一人残されたセノイは魔石を拾い、証拠保管用の袋に入れた。それからコイン目掛けて飛び回る鳥の通信メモを捕まえ握り潰す。
「……元友としてヒントは十分与えた。」
セノイは音声転送魔法を立ち上げ、部下に繋ぐ。
「リリアナを逃がした。……いちいち大声で復唱するな、耳が壊れる。外部の手引だ身元は特定できた……ああ、そうだ。追跡を始めろ、時々感知できなくなると思うが気にしなくていい。騎士団のサンにも情報を回すんだ……文句を言う暇があるなら頭を動かせ。」
一方的に魔法を断ち切ると、床に残ったコインを拾い上げ指で弾く。血の付いた表と金に光る裏は交互に輝き、セノイの拳に収まった。
「打算を上回る強い感情を恋と呼ぶ。これ程身を焦がれる恋にそう落ちれるものではない、だが。」
手の甲の上に出たコインは血が付いている。だがコインを持ち上げると、手の甲も血で濡れている。出た面の血をふき取ってよく見ると、数字が刻まれた裏だった。
「こいつは幸先悪いな。」
王位継承者について
ギルドの国は強いものが国王になります。挑戦者は全ての国民にその権利があり、人生に一度だけ王太子に決闘を申し出ることができます。王太子の死と同時に挑戦者がその座を手にします。王太子が国王になると短刀を自身が選んだものに譲渡し、その人物が暫定的な王太子になります。
政策等をミスると挑戦者に殺されます。挑戦者に傷を負わせた分だけ王太子の名が傷つき、人望を失います。
結構、きつい……
世の中の告白を見ますと、『愛してる』とか『大好きです』とか、自分の感情に即したものが多いな、と。
そしていざ書いてみましたら……
『大好き』→
で?だから?
(リリアナは絶対にそう言うはず。)
『愛してる』→
あっそ。
同上。
『守ってあげるよ』→
自分の身ぐらい自分で守れます。不要です。
(リリアナは程々に強い。)
いや、ギルドリリアナカップルはロマンチックにしたいけど、リリアナがひん曲がりすぎててどうも玉砕される未来しか見えない。
というわけで、こんな過激な形になりました。
読んで頂きありがとうございます↓