はじめに
自分が転生した事に気が付いたのは、わずかな痛みに耐えながら冷たい土砂に埋もれていた時でした。
ぼんやりと意識が浮上し、動かない体に焦り周りを見渡すと、かすかな呼吸音と呻き声、馬車は横転し他の乗客たちも倒れていたり立ち上がろうとしていた。
散らばる荷物と大量の土砂、崖崩れにでも巻き込まれたのだろうかと、思った時に溢れた記憶は前世と思われるもので、名前などの固有名詞は思い出せないながらも、仕事に生き人間関係に悩み孤独ながらも地道で堅実な男の、少年から中年までもの。
そんな地味な人生が心残りだったのか、今の自分は真逆の性格となっていた。新しく美しく素敵なものに心ひかれ、努力とか根性とか頑張ることが嫌い、なのに若さ故の万能感から絶対成功するものだと思っている。
華やかな都市生活に憧れ、王都の学園に進学し魔道士として大成し、素敵な淑女と恋愛し結婚するのだと意気込んでいた私は、前世の自分に混乱し気を失ったのでした。
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彼は興味が無かったので知らなかったが、ここは前世で少しだけ流行ったゲームより派生した世界。熱狂的な一部の思想により生まれ、ゲームの始まる時が迫っていた。
彼は追加ディスクで登場する、恋愛脳な魔道士年下ショタ枠の際物攻略対象者のハズだった。事故にあい前世を思い出して性格と価値観が変化するまでは。
しかも、ヒロインにモブ令嬢や悪役令嬢が個々に動いた世界も少しずつ変化し、ゲーム開始時点で全く違うものになってしまった。
ヒロインは貧乏から途中編入し、遅れを取り戻すべく努力する所を評価されていくハズが、普通に入学した為にあまり注目される事もなく、高位貴族でクラスも違う攻略対象者達との接点がなく、釣り合う近接領地の貴族と婚約した。
モブ令嬢は高位貴族の婚約者に困っていたハズが、知識チートにより爵位を上げ高位貴族となり、ゲームとは違う幼なじみの貴族と婚約をし、既に結婚の為に学園を卒業している。
悪役令嬢は家族に疎まれ、それ故に初恋相手の王子に執着してヒロインを虐げるハズが、家族から溺愛され苦労する王家との婚約は辞退し、優しい従兄弟とラブラブで婚約予定である。
誰もざまぁされなかったし、冤罪も婚約破棄もなく不幸にもならなく平和で、元になったゲームにより転生者に馴染みのあるものが多い。そんな世界で、前世に夢見た四季を楽しみ美味しいものを食べ、のんびりまったりする話。




