約束ごととお休みと
「病気で横になると、できること減っちゃうからね」
ママにそう言われて、布団から顔を出す。
「うん……なるべくそうするね」
やりたいことはいっぱいある。
保育園のみんなにも伝えたいことがあった。
でも、私は今こうしてベッドにいる。
ぼんやりとする意識の中、私は昨日のことを思い出す。
(きのうはもっとはなせたのにな……)
冬の精霊さんと会話していたときのことを振り返る。
難しい言葉をたくさん使った気がする。
いろんなことを教えてもらった。
その思いがぼんやりとしていく。
まるで頭の中に霞がかかった、そんな感じさえしてきた。
「ママ、あのね……」
私はストローで水を飲んで、昨日の出来事をママに伝える。
話し終えると、コップは空っぽになっていた。
「そっか。ありがとうリシアちゃん」
ママは私の話を聞き終えると、頭をなでてくれた。
ついうれしくなって笑みがこぼれる。
「魔法が使えるのはリシアちゃんだけだから助かるわ」
ママはコップにペットボトルの水を注ぐ。
「お兄ちゃんやタイガちゃんは?」
私の言葉にとママは困った様子で笑っている。
「なら、おてつだいしてもいい?」
「良いわよ」
「ありがとう、ママ」
返事をした直後に、咳が出た。
少しむせた私はコップの水をストローで飲む。
ママは背中をさすってくれた。
「まずは風邪を治すのに集中してね」
「はい……」
ママとお話しようとするたびに席が出る。
「お話はあとでもできるから、今は横になっていようね」
私は首を縦に振り、言われたとおりにベッドで横になる。
「元気になったらやりたいことや、してみたいこと考えておいてね」
ママはそう言って椅子から立ちあがり、引き出しを開ける。
昨日お兄ちゃんからもらった虫眼鏡を手に取って私に話しかけた。
「虫眼鏡、ちょっと借りるわね」
私は首をかしげる。
「おばあちゃんに精霊さんや妖精さんが見える魔法をかけてもらうために、ね」
「ありがとう、ママ」
ベッドから飛び起きてママに抱き着こうとするものの、まためまいに襲われた。
(むー)
本当に元気でいよう、二度と風邪なんて引くものか。私はそう固く心に決める。
ママはほほを膨らませた私を見て、私の体を布団からトントンと叩く。
心地よいリズムに私はうとうととしだす。
「未来を夢見て、今はおやすみ」
ママはそう言うと子守唄を歌いだす。
その歌を聴きながら、私はゆっくりと眠りの世界に入っていく。
大きくなった私と冬の精霊さんを思い浮かべながら。




