表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めぐる季節に安らぎを  作者: にじいろけだま
1/12

冬と春の境目に




「くしゅん」

「どうしたのママ。花粉症?」

「かもね。お薬飲んでおこうかな」

「なら、私持ってくるよ」

 私はキッチンに行って踏み台に乗りコップに水を汲む。

 そしてテーブルの上にある薬箱からお薬を取り出し、空いた手に持つ。

 ゆっくりと静かに私は廊下を歩き、部屋に戻るとママに手渡した。

「ママ、持ってきたよ」

「ありがとう。リシアちゃん」

 母が優しく静かな声で私の名を呼ぶ。

「どういたしまして」

 私は小声で返事をする。

「びええ――」

 ベビーベッドで眠っていた弟が泣き出し、ママがあやしにむかう。


「よしよし、タイガちゃん、ママはここにいますよ」

 大きな声で鳴く堆芽(たいが)を抱き上げ、ママは背中をなでる。

(ママはタイガにつきっきり……)

 頭を撫でてもらえるかなって私は期待していた。

(タイガが生まれてからずっとこんな調子……)

 パパやママを取られた気がする、と考え始めた頭を横にも振る。

 何度も何度も横に振ってかき消す。


(お姉ちゃんになったんだもん)

 しっかりしようと私は私に言い聞かせる。

(なんだろう、このぐるぐるする気持ち)

 しっかりしようって気持ちとパパやママを取られたって気持ちがある。

 心の中で絡まりもつれあい、私はため息をつく。

(パパは私の名前が『愛の理を知る』って書いてリシアって教えてくれたけど……)

 愛ってなんだろう、パパとママからの愛が減っちゃった気がする。

 ボーンという音が、葛藤中の私の耳に届く。

 リビングの大時計が4時を指していた。


「あら。もうこんな時間」

 堆芽をあやしているママが言う。

「お夕飯、買いに行って――」

「ふえええ」

 また堆芽が泣き出す。

「あらあら」

「私行ってくるよ」

「リシアちゃんが一人で、か。うーん……」

 私だってお手伝いぐらいできる、そんな思いをママに告げる。

「そうね、もうすぐお兄ちゃんが部活から帰ってくるから、任せちゃおうかな」

 ママはそう言うと、はさみを取り出し、新聞紙の上で広告を切る。

「……わかった」

「上着は着ておこうね。外はまだまだ寒いから」

「はーい」

 ママが大河をあやしながら、クローゼットから上着を取り出す。

「ただいまー」

 私が上着を着ていると、兄が返ってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ