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興奮して寝られなかった…筈だったがいつの間にかに寝入ったらしい。

気付くとスタンに揺さぶられていた。

「随分楽に成った様だな?」

今回はうなされてはいなかったようだ。

「ただし、鼾は程ほどにな?

奴ら迄聞こえないかとヒヤヒヤしたぞ?」

「あっ!すいません!自分でも知らなくて……」

「冗談だよ。そんな安普請じゃないから安心しろ。出かけるぞ。」


外に出ると既に日が落ちて久しい感じだった。


…………!


あまりの幻想的な光景に息を飲む。

それぞれの木々に建つ家々に灯りが灯されている。

電気では無いからだろう、灯りが微妙に揺れているのがまた趣深い。


それを見て、してやったと言わんばかりにニヤリとする。

「なかなかのもんだろう?

100景の1つに挙げられるんだぞ?」

どこか誇りすら感じさせるその顔は、彼にとってここが特別な場所で有ることを示していた。


もし彼が僕の想像通りなら、この町を創るのに関わったのかもしれない。


「高い所は大丈夫かい?」

今更の様にも思える言葉をかけてくれながら樹の枝の間を巡らされている板を渡りながら一際大きな樹に有る家に向かう。

扉には板がかかっていて何か書いてあるのだが文字は読めないようだ。


開けるとムァっとした酒臭い熱気とカン高い声が漏れてくる。

「いらっしゃい……スタン!!」

「久し振りだなオーウェン。

今日は宜しく頼むよ。」

「全く本当に5年顔を出さないとは思わなかったよ!

今日は貸し切りだ。

好きにやってくれ。」

「ありがとう。」


「……その時だよ!

スタンの後ろに回り込んで来た奴が居たんだ!

オーガと見間違うかというほどデカイ奴!!!」

「ハーッハッハー!オーガ見たことないけどな!!」

「でも僕は慌てること無かった!

スーパーエキセントリックファルコンが炸裂!!

ドッカーン!!!バリバリバリ!!!」

「嘘つくんじゃないわい!!

そのバリバリってのは何の音じゃ!

ズボンが破れた音か!?」

ダヴィッドの突っ込みが入る。

「さっき聞いた時と武器の名前も変わってるんじゃない?」


椅子の上のポップスに声をかける。

「そうか、後ろから来ていた奴はそんなにヤバい奴だったのか!

ありがとうよポップス。」

「スタン!!言ってやって!!!

誰も信じてくれないんだよ!!!」

「薄暗くてちゃんと確認出来なかったな…兎ぐらいじゃなかったか?」

「そこまで小さくは…」

言いかけるポップスを押し退けて当に牛の様な体型の男が出てくる。

丸太の様な腕に服がはち切れんばかりの筋肉。

身長は2mを超えるであろう少し癖っ毛でブロンズの大男だ。

何処か幼さを感じさせるその垢抜けない表情とのギャップが魅力的と言えるかもしれない。

「スタン!!!」

「マルコス!!!

無事だと信じてたよ!」

ガッチリと抱擁を交わす。

「痛い痛い痛い痛い!

俺が今無事じゃなくなりそうだ!」

抱擁を解くと繁々と見る。

「またデカク成ったんじゃないか?

何喰えばそんなん成るんだ?」

周りがドッと沸く。

その横にはいつの間にかに黒髪の女性が控えている。

白を基調とした如何にも由緒正しげな鎧を着込み凛々しさを体現した如き佇まいだ。

30には届いてはいなさそうだ。

目元に少し入るシワと僅かに染まった頬が逆に知的な美しさを際立たせている。

所謂クールビューティーと言った感じか。

「スタン。お久し振りです。」

少し控え目な抱擁を交わした後ガッチリと握手を交わす。

「何処のお姫様かと思ったらエレインじゃないか!

また綺麗に成ったんじゃないか?

その格好を見た肝心だと上手く行ったのかな?」

「貴方こそまた口が上手く成ったのではないですか?

髭も良くお似合いですよ。」

少し微笑んで続ける。

「上手く行ったような行ってない様な難しい所ですね。

結局鎧と剣を受け継ぐ事は出来ました。

家の取り潰しも免れたのですが…。」

少し表情を曇らせる。

「まぁその辺はおいおいと言うことで。」

「そうか…色々有ったようだな。

後程聞かせておくれよ?」

気を取り直した様にマルコスに向かう。

「おやおや?皮肉屋の妹君は何処に居るんだい?

遂にシスコン卒業したのかい?」

少し静かに成った気がした。


「ここですよスタン。

皆さんの感動的な再会に水を注すのも申し訳無いですからね。」

部屋の角からスッと出てくる。

赤いフードを目深に被り少し俯き気味なので顔は見えない。

スタンの前に来るとフードを上げた。

「ッ!!」

スタンが息を飲んだ。

中から現れたのは銀髪の女性だった。

40台半ばから後半と言ったところだろうか?

整ったかおだちをしているが少し口元を歪めている様に見えるのは反応を楽しんでいるようにも見える。

「サ…サリナなのか?何がっ!?何が有った?」

「何も…ただ対価を払っただけの事ですよ。」

涼しげな顔で彼女は微笑む。

正直僕はこんなに感情の乗らない微笑みを見たことは無かった。

彼女は見た目通り魔法使いなのだろうか?

僕の中での夢から強力な魔法使いに成って無双する事が消えた気がした。


「まぁ取り敢えず座らんか。

まずは一杯やって落ち着いてからでも良いじゃろう?

ホレ何も頼まんと店から放り出されるぞい?」

「あ…あぁ…」

すると空気を入れ換える様にマルコスが前に出てくる。

「おいスタン!ここで問題だ!!

判ったら俺が一杯奢ろう。」

ニヤリと笑うとキッチンらしき方に声をかける。

サリナが元居た部屋の角に下がる。

鼻で笑う音がした様な気がした

「出番だぞ!」

するとお盆を持った女の子がかけて来てマルコスの横に並ぶ。

「誰だか判るか?」

出てきたのは僕と同じか少し上ぐらいの歳だろうか?

豊満な体つきをした可愛い赤毛の女の子だった。

はにかみながら上目遣いでスタンを見上げている。

少し考えたスタンだったが手を上げる。

「降参だ。こんな可愛いお嬢さんを忘れるなんてヤキが回ったかな?」

「ティナだよ!!!驚きだろ!?」

「ティナ!?あのマルコスの後ろをチョロチョロ付いて回っていた!?」

「ハッハーッ!!賭けは俺の勝ちだな!!!

ホラホラ!!」

まるで自分の手柄の様に喜ぶマルコス。

「5年前に自分がなんと言っていたか忘れおったのか?

あの時の賭けはワシの勝ちじゃい!!

この子は間違いなく大陸中何処ででも通用する別嬪さんじゃよ!」

とダヴィッドが灰色の硬貨を渡す。

「信じてたのに見損なったよスタン!」

と硬貨を皮袋から出そうとするポップス。

ところがマルコスは皮袋ごと取り上げるとそれをティナに放る。

「それを持ち出されちゃしょうがねぇ。

これで全員に一杯ずつな!!」

非難の声を上げるポップスには目をくれず僕を見た。

目が合って固まってしまう。

数秒経った後に

「連れだよな?」

スタンを見る。

「あぁ昨日から。」

とスタン。

「そうか宜しくな!

マルコスだ。こっちに来て座んな!エールで良いか?」

何て言うか…圧倒されるな……。

「僕まだ未成年ですので…その…」

「何だ?未成年?親は何処に居る?」

「あ、いや、今遠く離れた所に…。」

「ふーん訳ありか。

でもなぁ、面倒見てくれる親も居ねえのに未成年ぶっててもしょうがねぇだろ?いつ成人すんだ?童貞捨ててからか?」

「ちょっ!そっ!それは関係無いで…は…ありませんか!?」

「ハッハーッ!!やっぱりな!!」

「おいおいそんなもんにせんか。」

「でもよぅ、惚れた女が出来てガキが出来たらどうすんだ?

未成年だからって言うのか?そんなもん気のもちようで自分の覚悟次第じゃねぇのか?」

言ってる事は短絡的で話がずれてる気もするが何となく来るものが有る気がした。

要は未成年を言い訳にするなとか、親元にいる訳じゃないんだから未成年のつもりでいちゃ駄目だとかそんな事が言いたいんだろう。

考えてみたら、こっちに来てからも僕は何も自分では決めていない気がする。

「そんなんじゃ気付いたら貰い手が無くなっちまう歳になっちまうぜ。なぁ?」

「ほう…それは私に言ったのだよな?

よし、表に出ろ。

今日こそ買ってやる。その良く回る舌をこの店の新しい看板にしてやろう。」


バコン!!!

「いい加減にして!!

うちの店を猟奇的な客だけがくる問題店にしたいの?」

ジョッキを持ってきたティナが金盆でマルコスの頭をひっぱたく。

そんな中僕はと言うとただ座って小さくなっていた。

「馬鹿に乗せられて無理しなくて良いのよ。

お水にする?それともジュースも有るわよ?」

優しく言ってくれるが心を決めてエールを貰ってみる。

意地ではないが何となく子供のつもりだった自分と決別するための良いキッカケに成ると思ったのだ。


それから…とマルコスが奥に目をやるとテーブルの一番奥に二人座っている。


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