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ソチモワールの一派

政務大臣ソチモワールは、風呂も浴び、久々に早めに寝床に向かうところであった。

イジュワール様の消息が不明となって十日余り。


託宣がないのは不安であり不便であったが、さしあたり国内の貴族達にも近隣諸国にも、動乱の気配がないことは確認できている。


部下達には、このままイジュワール様の不在が続いた場合にどのような影響があるか検証させているが、明日の午後に報告があるまで、ひとときの間があった。


休息を取らねば、正常な判断力は働かぬ。

頭では分かっていても、混乱のなかで図々しく一人休息を取るにはソチモワールは小心過ぎた。

ついついあちこちの部署を飛び回り、狼狽えた姿をさらしていた。


本人は気づいていなかったが、部下達は彼の能力を大して評価していなかった。

現場に出てきては、慌てた様子で騒ぐだけ騒いで去っていく。

役に立つ指示の出ることは皆無であった。


だが、ソチモワールは大臣筆頭にまで上り詰めている。


なぜか。

彼の部下、協力者達は、彼に忠誠を尽くし、汚れ仕事も厭わないからだ。


なぜか。

取り立てて、待遇が良いわけでもない。

極端な能力主義で、力さえあれば抜擢されるというわけでもない。

老若男女、有能無能取り混ぜて、部下達は働いている。

彼には、不思議な魅力があったからだ。


部下達は、異口同音に語っている。

何の気なしに話しかけられ、ちょっとした暴露話や偽悪的な話題があり、この方でもそんなことを思うのだな、と共感を覚えてちょっと笑って見せたとき。


「そちも悪よのう。」

口癖のように、この方は言うのだ。


すると、何故だか、この人のために頑張らねば、ぐふふ、という気持ちになってしまうのだ。


ソチモワールの一派は、奇妙な共同体であった。


ソチモワールが房付きの帽子をかぶり、いざベッドに、というところで執事がドアをノックした。


「至急お知らせしたきことがあると、配下の方がいらしておりますが……。」


ソチモワールは、小心者である。

やむなく、起き上がってガウンを羽織った。


「何事だ。」


「倉庫街で、強力な破精の術が使われた形跡があるとの報告が。」


「なんじゃと!? ニングルムが、動いているのか……? 」




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