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見習商人コルダ

護衛らしい男と二人で現れたその商人は、まるで子供のように見えた。


通常であれば、紹介もない訪問者にボタクリエ自ら応対することなどあり得ない。

だが、その物腰や提示した条件などから只者ではないと察した支配人が、ボタクリエに会わせることを決断し、今に至っている。


「いきなりの商談にボタクリエ様自らのご対応、感謝の言葉もありません。」


「いえいえ、ワタクシも一商人に過ぎません。商機をもたらしていただける来客こそ、いつでもお待ちしておりますとも。」


ボタクリエは優れた商才の持ち主であるが、それは同時に人間を見る目を持つことも意味している。


脇に立つ男も、単なる荒くれ者でないことはすぐに見て取れたし、この子供もただの子供でないことは一瞬で感じられた。


ゆったりとした応接の間に案内してお茶を用意させ、丁寧に話を聞く姿勢を示している。


この二人連れには高価なお茶をそれと知りながら楽しむ余裕があり、ハッタリの通じない相手であること、小銭稼ぎの類でないことは明らかであった。


支配人の判断が妥当であったこと、つまり自分の教育がきちんと成果を挙げていることにボタクリエはささやかに満足を覚えていた。


「では改めまして。私はコルダと申しまして、遠国の商人でございます。

と言いましても、私は修行中の身でありまして、今は店の名を出すことを許されておりません。私一人で培った信頼と人脈によって、成果を挙げることが求められているのでございます。

国の名も、同じく明かせば障りがありますので、失礼とは存じますが伏せさせていただきたいと思っております。」


どこの誰とも知れぬ話ではあるが、それだけに、重要な国の大店であるとほのめかしていることになる。

詐欺であればあまりに陳腐な話であるが、それでなお正面から商談を持ってくるというのであるから、相当な条件を示すということであろう。


「この帝都でしばらく過ごさせていただきましたが、大変な豊かさに驚いたところです。特に、魔道具の質と多様さは、噂にたがわぬもの。

そして、今回私が仕入れさせていただきたいのは、こちらで流行り外れとなってしまった品々でございます。」


話としては、ごく単純なものである。

まとめて魔道具の不良在庫を買い取ろうというのだ。

この国では流行らなくとも、他国でならばよい値で取引されるものもあるだろう。

こちらの市場を荒らさないのであれば、どちらにとっても利のある話だ。


「そして、取引は精霊石でお願いしたいのです。」


これには、ボタクリエも虚をつかれた。


「ほう。精霊石ですか。

昨今では非常に品薄となっておりますが、そちらのお国では、取引に差し出す余裕がおありですか。」


コルダと名乗る少年は、ゆったりとした微笑みを浮かべてうなずいている。

今はまだ幼いが、もう少し成長すれば、道を歩く娘子達が目を合わせるだけで顔を赤らめるような美男子になるだろう。


いや、今でもすでに需要がありそうではある。

あの侯爵夫人か、子爵婦人に紹介すれば、それだけでも……


何にせよ、この小さな商人は、珍しい取引をもたらしてくれるということだ。




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