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アビスマリアのゆくえ

「我々夢魔の一族は、この精霊との約定を終えたと思うのですが。」

スミは言います。


「それはそうですけど、風穴の管理人だった皆さんとしては、いいんですか? 」


ミステレンは、腕組みをしてうなっています。

「うーむ…… 風穴は、なくなってしまったしな。ババ様の…… イジュワールの指示に従うことも、もうないだろう。」


イーオットも、同じような顔つきです。

「アビスマリアは、風穴の役目は終わったと言っていました。もう一度風穴の再建を、といっても、ただで協力してくれるということはないでしょう。残念ながら、今の我々には、あの精霊に差し出せる何かがあるとは思えません。」


ケーヴィンも同意見のようです。

「だな。それに、口の利き方には気を付けた方がいいぞ。あのレベルの精霊だ、石の状態でも色々な力をふるうことができる。鎮めのための祭壇や神殿があったっておかしくないくらいだ。」


「そういえば、以前はダンジョンコアだったとおっしゃってましたね。ダンジョンは付与術で作れるものなのですか?」


「近いものだとは思うんだが、ダンジョンの作り方なんて、一般市民が知っているわけないだろう。」


それもそうですね。


「ダンジョンを作って、安置してやればいいのかと思ったんですけど。」


「ふぅむ。あの精霊が、人間から離れて静かに過ごしたいというのなら、それがいいのかもしれないな。」


「いやよ、そんなの。」


アビスマリアの声です。

皆さんは反応していません。

僕に、話しかけているということですね。


「やっとあの穴ぐらから離れられたんだから、しばらくは外にいたいわ。

コーダ、あなたは私を自由にしてくれたんだから、色々といいことしてあげるわよー。

一緒に、旅をしましょうよ。」


ええ……


僕がアビスマリアの発言に困惑していると、アラクレイが立ち上がりながら言います。


「だいたいコーダよ、お前さんはババ様を倒しちまったんだ。俺達は、反撃してねぇって意味じゃ降伏したようなもんだ。

お前さんは風穴の主を倒してダンジョンコアを手にしたってことだ。

だったら、その精霊も、コーダが持っていくのが自然なんじゃねぇか?」


それ、何だか僕は風穴を狙って入り込んだみたいじゃないですか……

とはいえ、アビスマリアもああ言っているんで、スミに預けることは受け入れてくれないでしょう。


「分かりました。とりあえず、僕が預かります。

 それで、僕が言うのもあれなんですが、皆さんは、これからどうするのでしょうか。なんというか、何もかも失ったことになりませんか?」 



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