スミの中身は
保管庫に戻ります。
スミの意識が戻ったようで、床に座ってミステレンと向かい合っています。
ぼそぼそと、途切れ途切れで小さな声で話しています。
ババ様、イジュワールが去ったことも、聞いたようですね。
僕の姿を見て、泣き笑いのような顔を向けてきました。
「コーダ……。」
「ババ様のことは、すみません。」
「ううん…… 仕方のないこと、だったんですよね……。」
誰!?
なんか弱々しい女の子がいますよ?
「どうしたんですか、スミさんらしくない。いつものように、厳しくしてもらっていいんですよ?」
「私らしさなんて、分からないですよ……
ババ様のことは、ずっと嫌だったけれど、命令のない暮らしなんて、したこともないんですから……」
おっと、ババ様と一緒に、何か別のものまで剥奪してしまったようです。
「そうだ、これは渡しておきます。」
ババ様の、いや、イジュワールの石を、差し出します。
「イジュワールという存在がどういうものだったか僕には分かりませんけど、人格や記憶のほかにも、一緒に取り込まれたものがあるかもしれません。
風穴についても、スミさんは全てを引き継いでいるわけではないのでしょう?」
スミは、手を伸ばせずにいます。
「ババ様のいなくなった私に……
風穴の管理者を名乗る資格があるのでしょうか……
私の知っているのは、ほんの少しだけ。
コーダが来てからの数週間で、今まで私がやってきたよりも、はるかにたくさんの魔道具が処理されてしまったわけですし。」
「何を言ってるんですか。今まで何年も、ここを大きな事故もなく守ってきたのでしょう。
それに、ミステレンたちは、とても気持ちのいい人たちです。あの家だって、作ろうと思って作れる場所ではないですよ。
そんな素敵な場所を作った中心にいたのは、スミさんだったのでしょう?」
大きな事故を持ち込んだのは、僕ですし!
ミステレンも、口を添えてくれます。
「受け取っておくんだ、スミ。君はまだ、夢魔の一族の使命まで捨てるつもりはないんだろう?
ババ様は、色々な人に憑依して、様々な場所に出入りしていたはずだ。その知識やつながりは、簡単には失うわけにはいかないよ。」
「いずれ、もう一度呼び出す必要があるでしょうね。
ただし、その時までには、対等の交渉相手になってなきゃいけませんけどね。」
スミが、手のひらを差し出してきました。
ようやく、立ち上がれるようですね。
黒いオニキスを、その手のひらで包むようにして渡しました。
スミが、ミステレンを見つめています。
「ミステレン。今度こそ私を、本気で鍛えてくれますか。」
「分かったよ。私も、自分が誰かを守るという役割に入り込みすぎて、その誰かさんを、守られる者に引き留めてしまっていたようだね。」
うんうん、素敵な師弟の誕生です……
と、わが師サー・エリクが騒いでいます。
「コーダ! コーダ! 悠長に喋っとる場合じゃないぞ。あの魔道兵器の隔壁は、もう機能を失いかけておる。隔壁がはじければ、中の融合魔石は一気に崩壊に向かうぞ!」
え、そういうものなんですか!?




