ババ様降臨
早く、早く……
祈るような気持ちで、スミ達を待ちます。
「十五秒……」
「ミステレンさん、良くない予感がします。非常に良くない……です。状況が大きく変わったら、どうしたらいいですか。」
「最悪の事態っていうのは、私たちが全滅したり周辺が破壊に巻き込まれることだね。僕のことは、後回しにしていい。コーダ、危険を感じているなら、部屋から出た方がいい。」
そりゃ、そうやって言うでしょうね。
ミステレンですからね。
「放っておけませんよ。」
僕にも、何度もご飯を食べさせてもらった恩義があります。
最悪の場合、魔道兵器を丸ごと剥奪して、ミステレンを抱えて逃げますか。
こんなことなら、装着できる絶魔体のスーツを用意しておくんでした。
と、そこへ走りこんでくる……いや、飛行の術ですね。
スミを抱えたイーオットが文字通り飛び込んできました。
「ミステレ……」
叫んでいたスミの表情が、焦りつつもふてぶてしいものに変わります。
ババ様の降臨ですね。
「ババ様、この魔道兵器と、対話をすることはできませんか。」
「ババと呼ぶでない。
これらと語るための言葉は、失われて久しい。次第によってはあきらめるほかない。」
試してみてはくれるようです。
魔道兵器に向かって祈りを捧げるように、念じています。
「接続申請を受理……」
お、何か反応はしています。
「権限未確認…… 個別権限の照会に回答なし…… 回答なし…… 」
難しそうですね。
アラクレイとムクチウスも、ババ様の様子を見守っています。
「防衛活動を開始」
魔道兵器の警告音と同時に、僕はミステレンのもとに飛び込みました。
エア・ブレイクからの、ベクター・ドライブ!
そして、ミステレンを縛り付けている金属の糸に、剥奪!
一連の動作を見逃してくれる魔道兵器ではなく、本体の一部に魔力が集積しています。
かわせ…… あ、ヤバいです……
思ったより、発動が早い……
魔道兵器から、小さな光の塊が、僕に向かって放たれています。
ゆっくりと、時間が流れているような感覚。
これは、いかん奴なのではないでしょうか?




