樽じいさんとの約束
本日2投稿目です。
樽じいさんの過去はさておき、目の前の作業に協力してほしいところです。
「それで、薬として使うわけではないので心苦しいんですが、絶魔体の材料提供に、協力していただけないでしょうか。」
「いいじゃろう。ただし、条件がある。」
「いいんですか!?」
「聞いておいてなんじゃ。お前さんがここを出ていくとき、ワシを一緒に連れていけ。」
知恵袋としては大変な価値のある精霊です。
僕としてはありがたい話ですが……
「僕にはここの品物を扱う権限はありませんから、みなさんと相談してみます。それにしても、なんで僕と?」
「決まっておろう。口が聞ける。」
「それだけですか…… まあ、ご協力いただけるだけでありがたい話です。」
ちょうど、ケーヴィンが戻ってきました。
残念ながら、手ぶらです。
「ケーヴィンさん、樽のおじいさん、協力してくれるそうですよ。」
「おじいさん? 確かに年代物っぽい意匠だけど、不思議なことを言うな。」
「あはは、まあまあ。」
ケーヴィンが、樽の魔道具の操作に気をとられていたので、笑ってごまかします。
「お、ほんとだ。ちゃんと反応するな。
そういや、イーオットとミステレンが、封印隔壁の一部を仮に組んでみるらしい。見せてやるって言ってたぞ。」
「本当に!? 今ですか?」
「えらい興奮してるな。作業は夕方までかかるみたいだったから、まだまだ形になってないと思うぞ。」
正直、絶魔体は材料さえあれば、僕はいつでも作れますからね。
例の兵器本体の方が、圧倒的本命なんですよ!
「ちょっとだけ、様子見てきます! すぐに戻ってきますから。」
言うなり、後ろも見ないで駆け足です。
例の兵器の保管庫は、最下層からすぐ。
いつもは封印されている扉が、確かに開いています。
「イーオットさん、入りますよ。」
返事を聞く前から中に足を進めてますけどね!
人間らしくない声が聞こえてきます。精霊でしょうか。
「機体に対する行動阻害行為を確認。警備活動を開始。」
ん?
ヒュイーンという風切音とともに、中で巨大な魔力が発動しています。
んん?
キュイッ、キュイッというわずかな金属音がしたかと思うと、イーオットの叫び声が。
「ミステレン!」




