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樽じいさん

ミステレンが教えてくれた魔道具、それは酒樽の形をしていました。


「ポーション製造の力をもつ樽型の魔道具だね。この注ぎ口の脇の箱に精霊石の粒をセットして水を注ぐと、本当ならささやかな治癒のポーションが生成されるんだ。」


「壊れてしまってるんですか。」


「そうだね、どうも効力が不安定で、まれにだけれど毒性を持ってしまうこともあったと聞いているよ。主の娘が体調を崩したのがお払い箱のきっかけだったらしい。」


僕にだけ、聞こえている声があります。


「ふん、人間どもが、またワシのことを悪し様に言いおって。」


はっきりとした意思を持っている精霊です。

何か、思うところがあるようですね。


「この樽一つでまかなえるわけじゃないけれど、助けにはなるかい。もう少し、何かないか探しておくよ。」


ケーヴィンは、ありがたそうに樽を転がして運んでいきました。


試してみたところ、確かにごく低位のポーションが生成されます。

速度はそれほどでもないのですが、ケーヴィンがちょっと息を付けるだけでも、絶魔体装置ラインの稼働率は、ケーヴィン一人の時から二割ほど向上しました。


改善!


しかし、問題が発生します。

僕達が何かポーションを作り変えているのに気づいた樽の精霊が、へそを曲げてしまったのです。


「おかしいな、どうもうまく付与が働いていないぞ。」


ケーヴィンが、装置を止めて言い出しました。

僕には、分かっていたんですけどね。


「こいつ! ワシがせっかく作った薬におかしなことをしてダメにしおって。

一体なんじゃ、ワシの薬から、何を作っておる?」


フリーダムな精霊のようですね。


魔道具に精霊を封じる場合、精霊が抵抗したり知性がないものであるときには、強力で具体的な命令で縛り付けます。

協力的な場合には、ごく軽くて緩い命令でも魔道具が作れると言います。


逆に言えば、この精霊は、元々治癒の働きが好きだったのでしょうね。


「ケーヴィンさん、ミステレンさんに、ほかの魔道具のことを聞いてきてくれませんか。僕は、この魔道具を調べてみるので。」


「ん? コーダは、魔道具に詳しいのか?」


「詳しいわけじゃないんですが、似たような魔道具を前に住んでいた町で使ったことがあります。」


「ふーん、ま、ミステレンのところに行ってくるよ。」


片手を挙げて、ケーヴィンは歩き去っていきます。


スミは、今回のこの製造ラインの件に関わっていません。


ババ様が認めたので仕方なく黙っているものの、今までの仕事の仕方と全然違うやり方でどんどん魔道具が処理されてしまっているので、面白くはないでしょう。

あんた達で勝手にやって、という態度でした。


スミが近づかないなら、魔道具の精霊としゃべってしまってよいんじゃないでしょうか。


「樽のおじいさん。聞こえますか。」


「ん…… ふぉっ!?」




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