製造ラインの完成
その後も、付与術を使うケーヴィンに対して、ちょっかいをかけてきたりブツブツと呪いのつぶやきを繰り返す精霊が何体も現れました。
昼休みにミステレン達に相談したところ、回廊部分に置いているような魔道具ならば、剥奪で抜き取ってしまって問題なかろうということでした。
お互いのため、ということで、さくさくと精霊石に変えてしまっています。
どこかで第二の生を受けられるといいですね。
ドアベルの魔道具でもそうでしたが、表立って人間に姿を見せずに、幽体離脱のように霊体でうろついているものも結構いるそうです。
わざわざ風穴に運び込まれるだけあって、魔力が少なく危険てまないものでも、なかなか不快な嫌がらせをしてくるとか。
「そういえば、ケーヴィンさんに、付与術を中で使わないようにって話をしてましたっけ?」
「いや、してねぇよ。」
アラクレイの、あっさりとした答えです。
「付与術使うために来てんだし、あいつなら、まあ何とかなるだろ。」
ふーん。
ドアベルの事件のときには、荒事に慣れてるような気配はありませんでしたけどね。
いや、あの精霊は、ケーヴィンを脅かすくらいの嫌がらせしか考えてなかったんでした。
僕が大げさに反応したせいで、ケーヴィンが腰を抜かすような羽目になっただけで……
ちなみに、ケーヴィン本人は、付与術のせいで狙われているということには気付いていないようです。
風穴が厄介な魔道具の安置場所なのだから、これくらい当たり前と思っているふしもあります。
美しい誤解がここにも。
それにしても、冒険らしい冒険って、なかなか無いものですね。
邪魔をしてくる魔道具を間引いているうちに、風穴の回廊もずいぶん静かになってしまいました。
それから一週間、ようやく絶魔体の製造ラインができあがりました。
「それじゃ、試運転を開始するぞ。」
ケーヴィンも、すっかり司令官役が身に付いてきました。
製造ラインに必要なのは僕とケーヴィンだけなのですが、残りのメンバーもそろって見守っています。
製造ラインがうまく稼働すればケーヴィンへの依頼は完了です。
肝心な、このあとの付与術ですか?
あれは、ご褒美なのです。




