絶魔体製造ライン
ケーヴィンは、鍛冶屋を兼ねているだけあって、工作も器用なものでした。
ベルトコンベアに続いて、強力な圧縮装置と、できあがった絶魔体をきれいに並べていく仕組みをあっという間に組み上げました。
イーオットはプレス係から解放され、今は、例の魔道兵器を絶魔体で覆い固めるための設計をしています。
一方のケーヴィンは、大量に付与術を行うための素材探しに当たっています。
近場で大量に手に入る素材といえば、木や石、砂といったところですが、風穴の周りで作業をしていると目立ちます。
風穴の内部は丸ごと魔道具らしく、形を変えることはできても、壁を削って素材にするわけにはいかないそうです。
どんな素材を選ぶかは、ケーヴィンに任されました。
残りの僕たちは、作業の続きをしています。
「かれこれ、三日たちましたね…… 絶魔体、一体どのくらいの量が必要なんでしょうね。」
最下層のガラクタの片隅で、アラクレイたちとお茶を飲んで休憩しています。
「あの魔道兵器は、一体が5メートルはある。結界のように張り巡らせるとしたら、うーん、数千枚では足りんだろうな。」
残念ながら、僕はまだ、魔道兵器の実物を見せてもらっていないのです。
壁際に並んでいる、絶魔体を納めた箱を数えます。
「今までに作れたのが…… ざっと二十箱ですか。五百枚くらいですね……」
「まだまだってことだな。ここのガラクタも、結構減ってきたからな。同じ量くらいだとすると、ここが空になるまで作業をしても、千枚か二千枚か。全然足りないな。」
「そこからは、ケーヴィンの出番ってことですね。」
「そうだな…… 今のところ、付与術を、普通じゃありえないくらい上達させられるってことで連れてきてるが……」
「あの人のことですから、しばらくは……美しい誤解が続くと信じましょう…… ただ、僕の剥奪に比べれば、ずっと時間がかかりますよね。」
美しい誤解、それは僕の育った地方で、単なる勘違いを優美に表現したものです。
「そうだな。製造ラインをスムーズに流そうとしたら、付与術士は何人かいた方がいいんだろうな。しかし、ただでさえここに付与術士を入れるのは結構ヤバいんだ、厄介な連中に見られないようにしないとな。
それに、信頼できる奴となるとなかなかな。」
「何か月かかけて、作業をするんですかね……」
「こればっかりやってるわけにもいかねぇし、気晴らしのためにも、合間合間に進めていくだろうなぁ。」
猛烈な勢いで作業をしてきましたが、思ってたよりも長いことかかりそうな気配です。




