融合魔石
「融合魔石を使う魔道具って、ものすごく大きな魔力を消費するってことですよね。それも、内蔵しているからには、移動できる?」
イーオットが、なんだか嬉しそうに両手を広げて語っています。
「コーダなら、もう見当はついているのでしょう? 魔道兵器ですよ。伝説級の魔獣や巨大な軍勢を、ほんの数騎で相手取るような。」
古代の、強大な兵器。
それが、風穴の地下に眠っている。
いや、その兵器を封じておくために、この風穴が作られた、のですね。
なんですか、この浪漫感! ゴミ捨て場の底から超兵器!! 出撃するしかないじゃないですか!!! って、壊れかけなんですよね。
「すでに、稼働や整備の技術も失われてしまっているのでしょうか。」
「分解する方法も、中の融合魔石を取り出す方法も分からないのです。わずかに残された記録によれば、風穴に封じられた時点で、すでに取り扱いのすべは失われていたと。」
「すると、この土地は神話のような戦いの最後の地か、かつての超文明の基地のあった場所なのでしょうね。」
「うーん。それもよく分からないようです。
風穴のほかに残っている遺跡や文明の痕跡は全くなくて、近郊でもその兵器の部品や戦いの痕跡などは見つかっていないんです。
私がこの風穴に留まることにしたのは、そのあたりの調査や研究ができないかという思いもあったからなんですけどね。」
イーオットが見つけられないのであれば、見つけられる人はいないでしょう。
ミステレンが、後に続けます。
「ま、今の世にそんな兵器があっても、それこそ人の手には余るだろうね。
強大な兵器の残骸ではあるけれど、とうてい稼働はできない。研究して技術を学ぼうにも、うかつに自国に持ち込んで事故でも起こした日には、国土の何割かが人の住めない不毛の地になるかもしれない。
そういうことは分かっているので、周辺諸国もそれほど興味は持っていなかったんだ。」
「そんな状況では、ここから持ち出してもどうしようもありませんね。」
「うん。ただし、管理をしている我々としては、この平穏がいつまで続くかという問題はあるわけだ。いつかは、魔道具としての寿命で、融合魔石が露出してしまうんじゃないか、とね。」
「しかし、僕の術は、どちらかといえば魔道具の力を失わせるものですよね。その兵器たちを相手に、何かできることがあるんでしょうか?」
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