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木の精の願い

思い返してみれば、こんな大きな魔道具に剥奪の術を使うのは、初めてですね……

それに、こんな風に、意識が体から離れるのも…… これって、普通に戻れるんでしょうか!?


まあいいか、これも一つの冒険でしょう……

意識が薄れると、危機感も薄れるんでしょうか。


時間は長かったような短かったような、気が付くと薄明りの中で、おとぎ話の妖精の姿の小さな女の子と向かい合っていました。


「あなた、だれ? どうしてここにきたの?」


「僕はコーダ。君を、ここから出してあげようと思って来たんだけど。」


「そうね、ここは、くらくてせまい。あかるくてひろいばしょをしってる?」


「うん。いっしょにいくかい?」


「あたしはフロイデ。すてきなところに、うえてね。」


オレンジの光を帯びたクルミのような大きな種を受け取ると、辺りは暗闇に包まれました。




暖かい感触が伝わってきます。

声も聞こえますね。


「コーダ君…… コーダ君…… 聞こえるかい…… コーダ君……」


ああ、聞こえてますよ。


ゆっくりと目を開くと、ミステレンが何かの術を僕にほどこしているようです。


「ああ、もう大丈夫ですよ、ミステレンさん。」


「全然大丈夫じゃないから。」


スミが、脇から突っ込みを入れてきます。


改めて見れば、僕の部屋の天井です。

風穴で意識を失って、ここまで運ばれてきたということですか。


「そうですね、助けていただいて、ありがとうございます。」


握りしめた手の中には、例の木の実がありました。

夢だけど、夢ではないということですね。


「あの木の化け物に体中締め付けられて、一度は死んだかと思ったよ。」


穏やかに語り合っていたつもりだったのですが、肉体の方は大変なことになっていたようです。

見れば、腕もアザだらけになっています。

治癒の術を使ってもらってこれですから、運ばれたときは結構な重傷だったのでしょう。

フロイデめ……


「あの木は、どういう魔道具だったんですか?」


横になったまま、木の実を眺めています。


「魔道具というより、植物に精霊を宿らせて、霊樹を人工的に作り出すという試みだったようですね。

どういう力を目指していたのかまでは聞いていませんが、周囲の魔力を求めて枝や根を伸ばすので手に負えなくなってここに封じられていたようです。」


おや、イーオットまで来ています。


「種を、預かりました。あの木は、どうなりました?」


「枯れたよ。残ったのは、例の絶魔体だね。その意味では、君は厄介な魔道具の処理に成功したわけだ。」


「それは、良かったですね。」


「だが、あんな無謀な接近の仕方は、二度としないと約束できるかい。」


「そうですね。今まで、魔道具だけを相手にしてきたので、反撃されるなんてことは考えてませんでした。あと、大物が相手だと時間がかかるということも、反省してます。」


「それじゃ、ひとつ飯でも食いながら反省会といくか。」


アラクレイが締めくくると、部屋の中の空気が緩んだ気がしました。


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