表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/237

生きた魔道具

ミステレンとスミが、風穴を案内してくれます。


スミは、ミステレンのローブのすそをつかんでご機嫌に歩いています。

僕は、その後ろで一人です。

くっ。さびしくなんかありません。


下層の、壁の扉の一つの前に、立っています。


「ここに置かれているのは、魔力を与えながら閉じ込めている魔道具。何代か前の管理者は、少し話をしたことがあるという。」


「どうして、魔力を与えなくちゃならないんですか?」


「魔力がなくなってくると、魔力を求めて根を伸ばすから。」


「植物型の魔道具なんですか?」


こくりとうなずきます。


扉の脇の金属板に、ミステレンが手を当てています。

扉の鍵が外れる音がして、スミが押し開きました。

精霊灯の光が、中の様子を照らし出します。


小さな部屋には、木の幹や枝、根がところ狭しと這いまわっていました。


「うわぁ……」


思わず声を上げると、木の幹にあたる部分で、ぼんやりと光がともります。


「誰? 誰? 誰?」


問いかけてきます。


うっかり返事しそうになり、スミの方を見ます。

聞こえて、いないようです。


スミが近づいて行って、術を展開しています。

何かを語りかけているようです。


「何? 何? 何?」


どうも、うまく伝わっていないようで、混乱しているようです。

人間の言葉のような複雑なしゃべり方は、できないのかもしれません。


スミは少し額に汗をかきながら、厳しい表情で呼びかけています。


「あ? や? イヤ? イヤ」


どうも、あまりご機嫌ではないように感じられます。


「スミさん、ちょっと……」


声をかけてみます。

聞こえてはいるみたいですが、術を続けています。


「イヤ イヤ イヤ!」


拒絶する感じが、強くなってきました。

スミの肩に、手をかけて引っ張ります。


ちょうどそこに、鞭のように枝が振り払われました。

危ない!


おっと。

ミステレンが、手でつかんで抑えてました。

さすがのお兄ちゃん感です。


これは、対話ではらちが明かなさそうですね。

他の枝に触れて、剥奪の術を発動させます。


ぐっと重い手ごたえがあり、ミシミシという音ではない感触があります。

木に宿った精霊のように、生き物に結びついて長い間育ってきたようなものは、そう簡単には引き剥がされないようです。


集中して精霊の体を引っ張っていくうちに、意識がだんだん精霊のそばに引き寄せられていくようです。


「何! 何! 何!!」


植物の根が立ち上がって、僕を取り囲んできました。

触手の群れのようで、うへぇ、と変な声が出ちゃいます。


ミステレンが、後ろから声をかけています。

僕の意識は、引っ張っている感触をさかのぼるように、木の中へと入りこんでいきました……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ