スミの許可
魔道具から、解き放たれたがっている精霊。
彼らを解き放ったら、何が起こるのか。
僕が、ここに来てからずっと考えていたことです。
封印から解き放たれた精霊を連れて、冒険の旅をする。
あこがれますねー。
スミが、腕を組みながら難しい顔をしています。
「確かに、それは私達にはやりたくてもできなかったこと。でも、夢魔の一族のあり方は、そんな力の存在を前提にはしていない……」
「今までやれなかったんだから、これからもやらないなんて、それじゃあ新しいことは何もできませんよ。
とにかくしきたりを守っていくんですか。」
スミは、ムッとした顔でこちらをにらみつけました。
ちょっとあおりすぎましたか?
「私の一存だけで簡単には決められない。」
困った顔をしながら、ミステレンの方に振り向く。
「どう思う、ミステレン。」
すごいですね、振り向く一瞬で空気の色合いまで変わって見えます。かわいい。
そして、この扱いの違いですよ。
それはともかく。
「風穴の力ではこの先も処理できない魔道具については、頼ってしまってもいいんじゃないかな? 失うものがないというか。例の絶魔体のこともあるわけだし。」
「ほら。ミステレンが良いことを言った。」
いやもう、何でもいいんですけどね。
「風穴で処理できないのは、どんな魔道具なんですか?」
「中に魔力源を内蔵してるタイプのものや、ある程度魔力を与えないといけないタイプのものだね。後で実物を見に行こう。」
「その中には、スミさんとやり取りをするほどはっきりした意思を持つものもいるんですか?」
「あー、どうなんだろうね。あまり聞いたことがないが。」
ミステレンもスミの方を見ます。
「何代か前までは、やり取りもあった。私は必要なかったので、声を聞こうとしたことがない。
声を聞くだけで荒ぶる魔道具もある。用もないのに試したりはしない。」
ふーん。
なにしろ、現物を見てからということですね。
ようやく、大物っぽいものに出会えそうです。
いや、思っていたよりもずっと早いとも言えます。
彼らに信用してもらうためには、長い時間がかかると覚悟してましたからね。
ふふふ……




