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次の試み

風穴の家に戻ると、ミステレンとスミが出迎えてくれました。

イーオットとムクチウスは、工房で実験中だそうです。


「さすがの早さだね。結果はどうだったかな。」


アラクレイが、ケーヴィンの付与術で作った魔道具をミステレンに手渡します。


「精霊石が宿している精霊の力だけでは考えにくい力が、新しい魔道具に宿っているみてぇだな。」


珍しく、スミも近づいてきて一緒に品物を触っています。


「例えばこの布巾、元は頑丈な金属のヘルムから布地に精霊を移植したものなんだが……」


「触ってみたところは、普通の麻の布だね。」


「ナイフで突いても、剣で切っても、ほとんど傷まねぇ。」


「魔道具なんだから、単純に丈夫ってことではないのかな? もうちょっと、別の方法で確認できないかな。」


スミが、布巾を手に取ります。


「元の素材は、白硬銅でしたね。白硬銅には、魔力を通すと付着している泥や油を分解して溶かすという特徴もあります。」


「ああ、食器や調理器具にも使われているな。」


「ちょっと汚してから、魔力を通してみましょう。」


キョロキョロしたあと、窓のへりを拭いています。

普段はなかなか掃除しないような場所です。

あら探しをする先輩メイドのような目の付け所です。


それでいて、いつものごとく、小動物のようなしぐさです。

これを常に計算でやっているなら、大したものです。


汚れをみなで確認したあと、スミが軽く魔力を込めています。


「本当だ。清浄の術式も組んであるようだけれど、この布巾自体も浄化の力を持っているな。」


なるほど。

清浄の術式は、魔道具として使用した対象に清浄の効果をもたらしますが、魔道具自体をきれいにするものではありません。

使っているうちに汚れるような魔道具は、普通は道具としての手入れが必要なのです。


「そうなんですか。やっぱり、すごい布巾だったんですね! ……って、そういうことじゃないですよね、今、話し合う必要があるのって。」


「このあたりのことを実験するには、付与術が使える人間が欲しいんだが、ここに連れてくるのはな……」


「風穴にさえ入らなければ、大丈夫だとは思うんだけどねえ。」


アラクレイとミステレンが腕を組んで頭をひねっています。


「スミさん、付与術が使える人間が風穴に入るのは、どうしてまずいんですか。」


「簡単な話。付与術は、精霊によっては封印されているに等しい場合がある。付与術に対して、強い恨みを持っている者がたくさんいる。」


やっぱりねー。


「付与術士を呼ぶかはともかく、解放してほしがっている精霊の魔道具に、剥奪術をかけてみるのはどうでしょう。」



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