再付与の効果
「なんだ、そりゃ。付与が難しい機能だから、失敗するだろうってことか?」
「まだ何とも言えないが、付与させようとした機能のほかに、何か特徴的なことが起こるんじゃないかってことだ。」
ケーヴィンは眉間にしわを寄せて、またこいつは何だか分からんことを言い出しやがって、とつぶやいています。
それでも、石と作る道具のリストを示されて、準備に取りかかります。
きっと、今までにも説明不足のまま色々なことをやらされた過去があるのでしょう。
そして、確かめられたことは。
ケーヴィンが、腕組みをして眺めています。
「不思議だな。この石とこの素材だけで、こんな頑丈になるわけがない。」
普通の布地に、風精の力を宿した小さな精霊石を封じて、清浄の術式を付与しています。
掃除用の、魔道具です。
「確かに、魔力はそこそこ持っている石だったが、風精だ。強度を上げるような要素はなかったはずだ。」
単なる麻の布巾のように見えて、ナイフを突き立てても通りません。
金づちでガンガンと叩いても、ほつれさえしません。
それでいて、布のようにひらひらと柔らかく、折りたたむこともできます。
「無駄に丈夫な掃除道具になりましたね。」
この精霊石を抜き出したのは、白硬銅のヘルムでした。
風精の力で毒や熱、煙への耐性を与えてくれる魔道具で、白硬銅は普通の鋼よりもいくらか軽くて丈夫な素材です。
ケーヴィンはまだ不思議がっていましたが、僕とアラクレイはもう受け容れることにしました。
もうそろそろ、監視がついていることでしょう。
しゃべらないようにもう二点ほどの付与を試してもらうと、さすがのケーヴィンも、何かいろいろ秘密があるのに気付いたようです。
「黙っておけないなら、この続きからは外れてもらうが、どうする?」
「続きが知りたいに、決まってるだろう。」
口ぶりと目つきだけで確認しあうと、僕たちはケーヴィンに別れを告げました。
軽い駆け足で、街道を進みます。
「あいつら、ついて来るでしょうか。」
「一人でもっていうなら追って来れるだろうが、もうこの後は収穫がなさそうだと気づいているだろう。しばらくはケーヴィンの方を監視するんじゃないか。」
この力は、どう使えばいいんでしょうか。
二人とも無言のまま、まだ日が高い草原の中を、走り抜けていきます。
知ってか知らずか、茶虎丸の調子っぱずれな鼻歌だけが、頭の中にグルグルと響いているのでした。




