再びケーヴィンと
村へと走っています。
前回の小走りから、さらにペースが上がっています。
さすがに普通にはついていけないので、自分自身を対象に、火精の力を使って加速をかけています。
とはいえ、二十分は持続させなければなりません。
体力と魔力の消費と回復のバランスを図りながら、最低限の強化に抑えています。
少し足りない分は、根性という奴で補っておきましょう。
僕は嫌いな奴ですが、付き合わなければならない時もあるのです。
「アラクレイさん、そこまで急がなくてもいいんじゃないでしょうか……?」
「これよりペースを落とすと、付いてこられちまう。ケーヴィンのとこに行ったことくらいは後から調べられたら隠しようがないが、中の作業の様子は探られたくないだろ。」
なるほど、何を依頼したのかを秘密にしておくため、ですか。
「消音や隠蔽では?」
「向こうは曲がりなりに専門職だぜ。防ぐために用意された建物ならともかく、あんなボロ小屋で高度な探知を防ぐのは無理があるぜ。」
というわけで、数分間を稼ぐために、僕たちは走り続けるのでした。
そして、ケーヴィンの店へ。
「おや、どうしたのさ。そんなに慌てて。こないだの剣に、何かあったとか?」
「いや、茶虎丸はいい剣だったぜ。ちょいと暴れん坊だけどな。」
「だろう? いまも、あんたを守ってる気配があるもんな。」
僕とアラクレイは、顔を見合わせます。
あの髪留めは、付けた者の身を守るという触れ込みだったそうです。
「切れ味がよくて丈夫って、だけじゃないのか?」
「魔道具ってのは、見た目の形とはもう似て異なるものだって知ってるだろ。見た目が剣だからって、その力は別に剣の形に縛られるものじゃないさ。持ち主に力を与える魔道具の話くらい、いくらでも聞くじゃないか。」
「いや、そうじゃなくて……、そうだな。」
アラクレイが、柄にもなく中途半場に口ごもります。
前回、ケーヴィンに依頼したのは、単に付与術を行ってもらうというものでした。
それがどういう石だったのか、前は別の魔道具だったなんてことは知らせていません。
「今日は、また付与術でいくつかの魔道具を作ってもらいたい。どれも、個別の機能を持った魔道具だ。だが、大事なのは、お前さんが付与しようとした機能と、できあがった魔道具が持つ機能が、どう違うかってことなんだ。」




