村への支度
午後から、僕とアラクレイは再び村を目指し、抜き出した精霊石について検証してみることになりました。
あの後、比較的上位の素材でできている魔道具から回収した精霊石をいくつか、元の魔道具の素材についてのメモと一緒に持たされています。
こんなに頻繁に村を訪れるのは、外の監視役たちに刺激を与えることになりますが、いつものように何週も間を開けるには、皆の好奇心と興奮を抑えられない状況です。
イーオット達は、その間に、絶魔体の性質についてもう少し調べるそうです。
もしこの絶魔体が、紫焔鉛晶という高価で貴重な素材の代わりになるのならば、この風穴の中でも厄介な問題の一つが何とかなるかもしれないらしいのです。
「コーダ君、いや、君の存在の重さは、今では私達四人を合わせたよりも大きいかもしれない。対等の仲間として、コーダと呼ばせてもらっていいかい。」
村へ向かって出発する前、ミステレンが、改まったように話しかけてきました。
「ミステレンさん、剥奪の術は確かに自分の一部ですが、術の力の大きさでもって一人前扱いされるのは、かえって落ち着きませんよ。
僕がちゃんと成果を出して、皆さんの役に立てるようになってから、そのときにお話ししましょう。
それまでは、いつものようにお願いします。」
「ああ、それもそうか。失礼なことを言ってしまったな。私も、動揺しているらしい。」
僕の後ろにいたアラクレイが、かぶせるように声を出します。
「そうだぞ、ミステレン。コーダはコーダだ。
あとな、昨日からスミが黙ったままなんだ。
ババ様はああ言っていたが、コーダの力を積極的に使っていくなら、風穴のやり方だっていろいろ変えることになるかもしれん。
焦って先のことばかり考えるんじゃなくて、ちっと、スミの考えも聞いて足元を固めておいた方がいいんじゃないか。」
さすがアラクレイ、いいこと言います。
そうなんですよ。僕だって、剥奪術との付き合いは長いですけど、術が生み出すものが風穴にどんな影響を持っているかなんて、さっぱり分からないんですよ……
そして、僕とアラクレイは、村への道を走り抜けていくのでした。




