剥奪術が奪うもの
「剥奪術を使うと、魔道具の方は、精霊を抜き出したことで紫焔鉛晶のような……呼びにくいので、さしあたり絶魔体とでも言いましょうか、そういうある意味無属性の物質になってしまっているわけですよね。」
「そうですね。」
「ところが、その精霊石でもう一度付与を行うと、元の機能を取り戻すと。」
「はい。」
「そうなると、その精霊石には、魔道具だった時の機能が、丸ごと保存されていることになりませんか。」
「え?」
「つまり、その精霊石は、魔道具の素材の持っていた力も併せ持つようになっているのではないか、ということですよ。」
僕は付与術も使えませんし、魔道具そのものにもそれ程詳しいわけではありません。
素材の持つ力、と言われても、文献や講義で見聞きした知識としてあるにすぎません。
「もう一度、ケーヴィンのところに行ってみるべきだろうね。」
首をかしげて考え込んでいる僕の姿を見て、ミステレンが口をはさみます。
「コーダ君がアラクレイと村に行っている間、僕たちも剥奪術の活用方法について、いろいろなことを検討していたんだ。
その時には、剥奪術の副作用で、素材の力は失われてしまうんだと思っていた。そうなると、貴重な素材でできている高位の魔道具には、そうそう簡単に剥奪の術を使うわけにはいかない。
精霊の力がどのくらい精霊石として回収できて再利用できるのか、回収できそうな素材の価値とバランスを見極めて対象を検討しなくちゃならないからね。
それで、まずはそういった心配をしなくていい対象として、この最下層に積みあがった魔道具を処理してみようということになったんだ。」
イーオットが続けます。
「しかし、さっきの仮説が正しければ、副作用どころか、剥奪の術は、精霊の力と素材の力を統合して別の品物に再付与できるようにするという、別の次元の力を持っていることになります。」
剥奪術によって、抜け殻は絶魔体という高額な素材に変化し、精霊石は精霊単体以上の力を秘めるようになる…… そんなに都合の良いことが、あるんでしょうか……!?




