抜け殻の使い途
先ほどは軽石のようなスカスカの構造だったものが、強く圧縮されたためか、荒いガラスのようなものに変化しています。
「ふうん、強く押し固めると、ちょっと透明っぽくなるんですねぇ。」
「いや、それだけじゃないですね。これは……、魔力を遮断する素材になっています。」
「え?」
ミステレンとムクチウスも、集まってきました。
「そもそも、この抜け殻ってのはどういうものなんです?」
「僕も、抜け殻のことはほとんど調べたことないんですよ。硬い素材の魔道具も、抜け殻になると柔らかくなるってことは知ってました。
でも、もう一度付与術を使えば、だいたい元に戻せたんですけどね」
「さっきまでの作業の様子からすると、抜け殻は元の素材にかかわらず、同じようなものになっていますね。
それを強い力で圧縮すると、この魔力を遮断するガラスのようなものになる、と。
言われてみれば、これは紫焔鉛晶に似てますね。」
「紫焔鉛晶……ってなんですか?」
「昔海だった場所で稀に採掘される鉱石のような素材で、たくさんの精霊の卵の欠片が折り重なって、長い年月の間に結晶になったものだと言われています。」
「なるほど。その素材が、魔力を遮断するんですか。精霊の抜け殻ってことでは、似通ってますから、そういうこともあるかもしれませんね。」
イーオットの目が、細くなっています。
「そうなんですけど…… 簡単に言いますね。
紫焔鉛晶は、手のひら一枚の大きさで、金貨十枚にはなりますよ。」
金貨十枚……僕はほとんどお店で買い物をしたことがありません。
が、領内の経済を学んでいるときに、中級の官僚の給金が年に金貨十枚くらいと教えられた気がします。
中級の官僚となれば、執事一人と二、三人の召使いくらいは屋敷に置いているでしょう。
それくらいの人間と家族が食べていける価値が、今のこの一枚に?
「もう一つ、気になることがあります。付与術で、元に戻せたと言ってましたね。」
「そうですね、僕が抜き出した精霊石を使って付与術を施せば、また前のようにその魔道具は使えていました。」
兄さま達が戻してくれた魔道具は、父上達にもバレていなかったはずです。




