最下層の風景
最下層の風景は、僕が思っていたのとはだいぶん違いました。
なんというか、一番危険な存在とかいるのかと思っていたら、そこにあったのは、がらくたで埋め尽くされた空間です。
椅子やベッドのような大きなものから、水筒、棒、本、傘などそうでもないものまで、底が見えないほど、山積みとなっています。
「なんですか、これは?」
ミステレンが説明してくれます。
「素材に価値がある品物は、上層に置いておいて処理をしているだろ。あるいは、放置しておくと厄介なことになるものは、個別に対応して保管している。だが、素材に価値が無くて、害もないものは、こんなふうに、上から放り込んであとはほったらかしということさ。」
イーオットが補足します。
「それでも、むやみに破壊すると爆発したり障気を発生させたりしてしまいます。このまま放置しておくのもなあ、と気にはなっていたんですが、そこへ登場したのが、コーダ君というわけです。」
「つまり、僕がこのごみの山から精霊や魔力を抜き取ってしまえば、ムクチウスさんが残りの抜け殻をどんどん処理してしまえると、そういうことですか。」
三人の男たちが、にっこりと笑って親指を立てています。
一体どれくらいの数があるのかもわかりませんが、剥奪の術をこんなにたくさん使うなんて、僕もやったことがありません。
ここはひとつ、実験や訓練を兼ねて、挑戦してみるとしましょう。
「分かりました、やってみます。」
「よろしく頼むよ。まずは、色々試しながら、効率のいい手順を考えていくことにしようか。」
ミステレンの指示に従いながら、色々な魔道具を処理していきます。
まずは、ベッド。
火精と水精が封じてあって、夏は涼しく、冬は暖かい空気で包んでくれるというものです。
瞬間的に強い魔力が必要な道具ではないのですが、長年使われるものです。
その分、魔道具としても頑丈なのでしょう。
精霊を抜き取るのに多少時間がかかりましたが、やはり壊れかけだけあって、精霊を宿すほどの石にはなりませんでした。
残った木のベッドに見えるものは、ムクチウスがひょいと持ち上げて、ぐいぐいと丸めて押し固めていきます。
「抜け殻」については、僕もあまり興味を持ったことがありませんでした。
こねているうちに、濃い灰色の、軽石のようなものになっていきます。
ブロックのように、積みやすい形にして隅に置いておくようです。
イーオットが手にとって見ています。
「元の木材とは、まったく違うものになっているようですね……。」




