子どもの行方
「ほかの子供たちか? なんでぇ、急に。」
「詳しい事情は話せませんが、僕もそれなりに修行を積んできた人間です。そこらの魔獣にだって、簡単には負けないつもりです。」
アラクレイはけげんそうな顔をしたまま、小舟の支度をしています。
「ふんふん。」
「アラクレイさんがさっきみたいな話をしてくださるのも、僕がそういう荒事に巻き込まれるような状況にあるからですよね。」
「そうだな。秘密にしといて陰から守ってやろうなんてこたぁ、ねぇな。」
「ですが、ミステレンさんが子供を連れてくるのに、腕前を見ているとは思えません。」
「風穴で働いてる子供がいないってことを気にしてるのか?」
「そうです。子どもたちは、どこへ行ってしまったんですか。」
「安心しろ、みんな元気に生きてるよ。
ただま、ミステレンの、趣味っつうか生きがいってところだから、そっから先はあいつに聞きな。」
なんでしょうね、秘密の孤児院とか秘密の動物王国とか経営してるんでしょうか。
「じゃあ、僕はなぜ最初から風穴で働くことになったんですか? 何か特別な力を見せたわけでもなかったと思いますけど。」
「んー、俺も詳しいことは知らんのだけどな。お前さんは例外さ。お告げがあったのさ。」
「お告げ、ですか? ミステレンさんに?」
「お告げっつっても、俺達から見たらただの幻聴にしか思えねぇけどな。」
「どんなお告げだったんです。」
「この赤髪の子供を受け容れよとかそんな声だったみたいだぜ。」
「ミステレンさんも、精霊の声を聞けるんですか?」
「ミステレンの場合、聞こえるっつうか、向こうが話しかけて来やすいんだろうな。」
うーん。
確かに、アラクレイじゃあまり話を聞いてくれそうもないし、イーオットじゃ面倒なことになりそうですし、ムクチウスじゃ他の人に事情が伝わるまでしばらく時間がかかりそうです。
聞こえる聞こえないはともかく。
「お前さんの、守護精霊みたいなくっついてる奴が何か言ってきたらしいぞ。」
「え? 守護精霊ですか?」
「自分でも知らないのか? 俺には分からんけどな。スミも、コーダは何か精霊の匂いがするって言ってたぞ。」
ふーん……
守護精霊ですか。意識したことはないですね。
警固とか監視のために、僕が小さな頃から何かそういう存在を張りつけてあるんでしょうか。
あの親達ならありそうなことですが……
本気で隠ぺいされているなら、相当な時間をかけなければ見破れないでしょう。
ちょっとした目標ができましたね。




