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風穴の影

バラバラになった飛竜から、多少の食材を回収していきます。

飛膜の付け根の部分は、普通に食べても大して美味しくないのですが、あぶってから干すと、いいスープのだしになるそうです。

奥が深いですね……


茶虎丸は、無骨な見た目のわりに切れ味がよく、しかも軽く振るだけで血や脂が振り落とされてキレイになるのでアラクレイが喜んでいました。

そう、そういうところでアピールしていきましょうよ。

女子力的な。


途中から、街道を外れて歩いています。

草原を抜け、獣道にも見えませんがアラクレイは迷いなく足を進めていきます。

草を踏み分けても跡を残していないのは、どういう技術なんでしょうね。

普通の兵士が身に付けるような技とも思えませんが。


僕も、足元に風精をかすかにまとわせて道を歩いています。

風精の本質は”分散”。

触れたものを柔らかくしていくことで、はっきりした足跡や傷を残さないようにできます。


川岸に近づいたところで、アラクレイが周囲の木の様子を探っています。


「どうしたんですか?」


「対岸まで綱を渡して、川を渡った奴がいるな。」


この川の先には、普通の人が用のあるような場所はありません。

魔道具を処分するために運ぶときは、もっと上流の方に道があるそうです。


「そこそこの手練れだな。数は多くない。」


「泥棒でしょうか?」


「普通の盗人が狙うのは、解体後の素材くらいだ。風穴の中身は、簡単には換金できねぇからな。呪いの品を狙う者もいないではないが、風穴に侵入して脱出するとなると相当な技術が必要だ。今回の相手はそこまでではないな。」


「すると?」


「情報収集だな。」


「我々のことを探っているのですか?」


「俺達というよりは、風穴に運び込まれてくる品物だな。どこの都市がどんな魔道具を処分しているか。そこからいろいろ見えてくることもあるのさ。」


「なるほど。狩りますか?」


「見つけて泳がせる。背後によっては、そうそう手出しできんからな。風穴は、”中立”なんだ。」


アラクレイが、にやりと笑っています。


「アラクレイさん。ミステレンが拾ってきたっていう子供たちは、今はどうしているんですか?」



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