小飛竜討伐
低位の飛竜、小飛竜とでも呼んでおきましょうか。
図鑑で見たことがあるような気もしますが、危険度としても素材の重要度としても大したことが無かったので、記憶に残っていません。
実家での訓練で、もっと大きな飛竜を狩ったことがあります。
一部を除いて飛竜は炎の息吹を吐き出したりはしませんが、大きな音と衝撃波を叩きつけてくることがあります。
アラクレイの剣技は僕よりも相当上だと思いますが、相手が近づいてくるまで、衝哮と呼ばれるあの衝撃波をどうかわすのか、興味があります。
ばっさ、ばっさと皮膜の翼をはばたかせ、飛竜が高度を取っています。
直上から、高低差を使って加速して突っ込んでくるつもりですね。
小なりといえども飛竜。
その体重は二、三百キロはあるでしょう。
自分なら、どう立ち回るべきでしょうか。
高速で動いている生物を、火精を使って直接止めたりそらすのは、なかなかの魔力と術式が要ります。
風精で気圧を操作して引き下ろすという戦術もありますが、降下を始める前に展開するべきですね。
水精と土精で防壁を作ってしのぐというのはオーソドックスな対応ですが、面白味はありません。
小飛竜の様子を観察しながら、対応をいろいろ想定しています。
最後に訓練で戦闘を行ったのは、半年以上前になってしまいました。
すっかり、感覚が鈍ってしまっていそうです。
と、そんなことを考えていたら。
「飛燕斬!」
少し離れた場所で、無造作に、アラクレイが茶虎丸を薙ぎ払いました。
え?
小飛竜は、まだ数十メートルの高さで降下に備えて姿勢を整えていたところです。
剣技……ですが精霊の力も感じますね。
かまいたちのような技でしょうか。
一瞬遅れて、パン!という破裂音が発生しました。
相当な気圧の差が発生していたようです。
空中でゆっくりと小飛竜の首が離れ……胴体や翼もバラバラに……
うわあ、気持ち悪い! しかも血しぶきとか内蔵の欠片とか、こっちに降ってきました!!
「ひゃあ!」
「うぉっ!?」
アラクレイまで叫んでいます。
急いで、傘のように薄く広い防壁を展開します。
ばしゃばしゃぼたぼたと、描写するのもはばかられる光景が防壁の向こうに展開します。
「すまん、コーダ。首筋を狙った一閃だけのつもりだったんだが、乱刃になっちまった。」
「ああ、大丈夫ですよ、すごい威力の技でしたね。」
「しかしこれは、コントロールが難しい剣かもしれんな……」
シャトヤンめ……




