素材の剣
依頼内容は、剣を一本魔道具化してほしいということ、報酬は、細かい精霊石が5粒です。
午前中に回収してきた石を、全部使ってしまう算段です。
ちなみに、この細かい精霊石一粒でも、節約すれば半月暮らせるそうです。
「ふうん、見せてみなよ。猫目石の精霊石に、副石が6基か。アラクレイ、あんたが自分の得物にそんな大枚はたくのは見たことがないねぇ。何があったかは……」
「当然言えねえな。」
「俺の読みじゃ…… その子の警護か? この辺りじゃ見かけない雰囲気、石での支払い。かのアラクレイが得物を選ぶとなれば、敵は多数か人外か。」
「おしゃべりはその辺にしとけ。的外れなことをのたくってるうちはいいが、まぐれでおかしなことを口走ると、ここらには住んでいられなくなるぞ。」
「おぉ、こわいねぇ。分かってるよ、へへへ。」
いいですね、このうさん臭さ。実家でコッソリと読んでいたゲスい物語に出てきそうです。
「この剣を、そのまま使ってもらおうか。」
アラクレイが、腰の剣を抜いて渡します。
「ふーむ。この精霊石は、風精と土精を従えてるけど、風精の方がやや強い。切れ味を生かす剣が似つかわしいんだけど、あんたのこの剣は身が厚い。ナタのように叩き切っているんじゃないか?」
ケーヴィンの意見に対して、どこからともなく声が聞こえます。
「いいの、そのままでいいの。アラクレイ様が握ってきた、その剣がいいに決まってるじゃない!
少しくらい乱暴にされたって、あたしは大丈夫なんだから!!」
しょうがないので、フォローしておきます。
「アラクレイさん、今回は、実験も兼ねているので、使い慣れた剣の方が違いが分かりやすくていいんじゃないでしょうか。」
「そういうこった。この石にも、いわくがあってな。じゃじゃ馬かもしれんが、俺が乗りこなしてみせりゃ、色々と開ける道があるのさ。今は黙って、付き合っておけよ。」
ケーヴィンが片手を挙げて了解の意を示します。
「よし。アラクレイ、あんたに付き合ってれば退屈はしない。それはよぉく知ってるよ。このところ、楽しめる注文もなくって飽き飽きしてたんだ。気合い入れて仕上げてみせましょう。」




