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鍛冶屋ケーヴィン

「ああぁ、ああぁ、ああぁ……」


ゾンビのように、くぐもったうめき声をあげながらそのボロをまとった暗い影が立ち上がります。


スラムの路地裏や廃墟の洋館であれば、振り返ったその顔が溶け崩れていて、生肉を食らおうと襲ってくる展開が思い浮かびます。


青白い焔で焼き払いたくなる衝動をこらえながら、アラクレイの方を見ます。

特に動じていないようです。


くんくんと鼻を動かしています。


「お? ケーヴィン、今日はなんだか臭くねえな。」


「あおぁ、あ、あああ、あー。あー。

こほん、こほん。

ああ、そこの少年、驚かせてすまんね。

人としゃべるのが久しぶりだったから、ちょっと発声練習をね。

アラクレイ、君は相変わらずひどいことを言うな。

ちゃんとたまには水浴びをしているぞ。」


「最後に浴びたのはいつだよ。」


「そんな些末なことは覚えていないよ。」


「ああ、すみません。今、僕が浄化の術をかけました。」


まず消臭の術をかけたことは黙っておきましょう。


「は、それでボロいなりにこざっぱりしてんのか。

こいつはな、他人の目ってのをホントに気にしない奴でな。放っとくとすぐこもって一人の世界に入っちまう。自分の時間が一番大事って言ってな。

鍛冶屋や付与術士っていうより、もう工房の警備員ってとこだな。」


ふぅん、ケーヴィンさんは、変わった人なんですね。


「それでも、アラクレイさんが頼みに来たってことは、腕は信頼してるんですよね。」


ケーヴィンがまんざらでもない顔をしています。

フードを外してみれば、頬がこけて無精ひげが伸びているものの、目だけは丸っこくて、意外と善人ぽい雰囲気です。


「近場には、こいつしか付与術士がいないってだけだよ。

さて、仕事の話、始めるか。」


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