表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/237

村の鍛冶屋の付与術士

そんなわけで、アラクレイと僕は川を渡って近くの村に向かっています。


川岸に隠ぺいの術で隠してあった小船は、ちょっとした魔力で進むよくできた魔道具です。


「そういえば、風穴の仕事で、アラクレイは魔力を使わない作業をしてるって言われてましたね。あれってどんなお仕事なんですか?」


「ああ、暴れまわる奴と立ち合って、少しでも魔力を消耗させるってのがあってな。術を使うとそれも吸収されちまうんで、体さばきと読みだけでかわしつづけなきゃなんねんだ。」


「……なんか、凄そうなお仕事ですね」


「コーダもちょいと鍛えてやろうか? 術士だって、立ち回りができるとできないじゃ、全然違うぜ。」


僕も一通りはこなせるはずですが、この人の間合いではかなう気がしません。でも、だからこそ修行になるんでしょうね。


「はい、お願いします。」


あとで、この気楽な返事に後悔することになるんですが、それはまたのちのお話ということで。


隣の村までは小走りに近いようなペースで移動していきます。

普通の人なら数分で根を上げる速さですが、こちらを確認もしません。

むしろ鼻唄が微かに聞こえてきます。


鼻唄? アラクレイではなく、預かってきた精霊石から聞こえているようです。

ごきげんなようで何よりです。


往復で半日と聞いていましたが、四半刻ほどで到着しました。

アラクレイは汗もかいていませんが、僕は息が上がっています。


ちなみに、汗まみれになるのは嫌だったので、途中からわずかに冷気をまとっていました。

ふうはあ。


「そいじゃ、鍛冶屋に行くとするか。」


「鍛冶屋なのですか?」


「ああ、こんなへんぴな田舎じゃ、付与術だけじゃ仕事が少なすぎる。最近は精霊石もなかなか採れなくなって、値が上がっちまってるから、魔道具の製作の依頼も減ってるしな。

たいてい、何か別の仕事と兼ねてる。」


「付与術って、希少な能力なんだと思ってました。そんな、食べていくのに困るようなものなんですか?」


「いや、稼げないって意味じゃないぜ、暇だってだけでな。腕も悪くないし、今回の仕事も、きっと喜んでやってくれるさ。

と、ここがケーヴィンの店だ。」


見たところ、店というより単なる作業場で、あまり客にアピールする雰囲気はありません。

ま、小さな村なのですから、一見さんなどいないのでしょう。


「おい、ケーヴィン、いるんだろ? 珍しい仕事を持ってきたぜ。」


アラクレイが、勝手に入っていきます。

中は薄暗く、目がなれていないのでよく見えません。


ふと横を見ると、入口のすぐ脇に、薄汚れたボロのような男がうずくまっていました。


ひいっ、く、臭い……


「おお、ケーヴィン、そんなとこにいたか。」


アラクレイが振り返ります。


この人が?

さっき、思わず浄化と消臭の術を発動させてしまいました。

し、失礼に当たらないといいのですが……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ