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圧迫面接

スミが、無表情になっています。


黒目が大きくなっていて、なにか物音が聞こえたときの草食系小動物のようです。

眺めているだけなら、ちょっとかわいいと思えます。


「剥奪の術か……」


低い声です。

あれ?


「それより、そなたは、いつから気づいておったのじゃ?」


なんでしょう、この口調。

それに、何に気づいていたというのでしょうか。


「わらわが今代の宰領であると、いつ気づいたのじゃ。」


ん、宰領?

ああ、ここの責任者なのだというから、ちょっとヨイショして大げさに言ってみた、さっきの話ですか。


正面切って聞かれると、困っちゃいます。

あんたが自分でワタシは偉いって言ったんじゃないですか。

単なるヨイショですって、言える雰囲気じゃなくなってるじゃないですか、もう。


イーオットやミステレンが、神妙な面もちで控えています。

これ、誰も助けてくれないヤツですね。


何を求められているのか見えなくて、答えが浮かびません。

スミの表情にヒントがないかと探ってみますが、人形のように表情を失っています。


「気づいたも何も、最初から知っておったということか。なるほどの。」


勝手に納得したようで、話が進んでしまいました。

誤解してますけど。


「では、誰が送り込んだかも言えぬということじゃな。」


それは、確かに言えませんね。

縁を切られたといいますか、存在も消されていますからね。


「私は、すでに帰るところのない身でございます。かかわりは、ございません。」


そんなに遠くの国のことじゃないですからね、調べ回ればすぐ分かっちゃいそうですが。


「どうだかの。それで、そなたは風穴のヌシ達をどうするつもりじゃ。」


ヌシ? 大物のことでしょうか。


「私にどれだけのことができるかも、まだ分かりません。今はただ、こちらで暮らさせていただければと。」


「欲のない話じゃな。欲を持たぬ力は雷雲のようなもの。かえってひとを遠ざける。

欲のないことが美徳などと勘違いするでないぞ。」


ふん、と鼻を鳴らすような感じで気配が消えていくと、いつもの表情のスミが、帰ってきました。


皆が静まり返っているのを見て、なんとなく察したようです。

こちらをにらんできます。

僕のせいではないですよう。


「お茶、冷めちゃいましたね。いれ方を、教えてもらってもよいですか?」


何はともあれ、僕はお仕事を失わずにすんだようです。


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