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僕の使命

その後、改めて魔道具を破壊するとどうなるか、別の魔道具を使って実演してもらいました。

爆風や飛び散る欠片の危険もさることながら、障気と呼ばれる濁った魔力が後に残るのが、もっとも手に負えないという話でした。


風穴の管理者のお仕事としては、もちろん重要な部分です。

なぜこの風穴という施設が必要になったか、処分に困った魔道具を山奥や海の底に捨ててしまってはいけないのか、そういった背景に関わるお話だからです。


しかし、僕の目の前の使命は、まったく違うところにあります。


いま、僕は、台所に立っています。

調理をしているわけではなく、スミの、右後方に立っています。


カウンターのようになった台所からは、テーブルについて待っている四人の姿が見えます。

みなの視線が、緊張と、ある種のメッセージを伝えてきています。

なんとかしろ、と。


最初に、手伝いましょうかとスミに声をかけたところ、「いい」と一言でした。

下ごしらえを見ていると、どうもおぼつかないので、皮むきや材料を切ったりするくらいならできそうですと話しかけてみましたが、「今日はとにかく見ていて」と断られました。

三度目に声をかけたあとには、「手を出したら許さない」と宣告されました。


僕は料理を作ることに関しては素人ですが、おいしい料理を食べるのは大好きです。

ポーションや薬草の加工などの訓練で、どうなると薬効が失われたり、扱いづらい薬になってしまうかも知っています。

それらの経験が、直観として伝えてきます。

危険な香りがします。


このままでは、肉が焦げます。

スミの視界の外から、細く、細く収束させた風を送り込んで、火力を抑えています。


魚には、塩を振りすぎています。

これも、魚の表面に目に見えない空気の流れを作り出して、脇の方へそらしていきます。


たくさんの調味料を入れすぎたスープに、後から水を足していますが、明らかに分離して混ざっていません。

スープの中身に働きかけてこまかな振動を起こし、少しでも味のむらをへらすよう試みます。


飯マズっていうんですか、こういうの。

術を使っていることを悟られるわけにはいきません。

なんとか、なんとか食材の救済を……




できあがった料理は、どうにか食べられるものになりました。

イーオットやミステレンはともかく、ムクチウスまでほっとした表情をしたことに、僕も何か得体のしれない満足感を得たのでした。


それと、僕は、当分の間、”スミから料理を学ぶ”ために、ペアで当番を務めることになりました、とさ。



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