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魔道具のゆくすえ

隠し通すつもりはありませんでしたが、こんな風にあっさりと読まれてしまうとは。


「じゃあ、その辺りのお話を伺いながら、コーダ君に解体の作業をしてもらうことにしましょうか。」


「はい。今後、一緒にお仕事をさせていただくなら、何ができるか、何を学ぶべきなのかを話し合わないといけないということですね。」


うんうん、と微笑みながらイーオットが金床の針を拾い上げます。


「先に、魔道具の話を続けましょうか。

今見てもらったように、見た目は変哲のない針でも、あのスレッジハンマーの一撃で折れもせず、曲がりもしていません。これが、魔道具の特徴です。」


「見た目と丈夫さが関係ないということでしょうか?」


「もう少し言えば、魔道具というのは、ある品物に魔力が宿っているというより、精霊が元となった品物の形を取っていると考えた方がよいのかもしれません。

 小さな布地の衣装が全身に及ぶ強力な守備力を備えていたり、細い木の杖が岩をも砕く打撃力を持っていたりするのに違和感を覚えてしまうのも、見た目と常識に囚われているということなのでしょう。」


話しながら、イーオットが、針を僕に渡してきます。

先ほどのは、魔道具が物理的に叩いたり削ったりしてもかんたんには壊れないということを示す演出だったんですね。

それで、改めてこれを解体してみましょう、と。


「分かります。ミスリルの鎧より丈夫なメイド服とやらを、見せてもらったことがあります。布地だと思うから、とまどうのですね。精霊の加護が、メイド服のように見えている。そうでないと、本質を見失う、と。

確かに、精霊が抜けだした後の品物は、元には戻らないですからね。」


「……ん? 精霊が抜けだした後、ですか。

 魔力があるうちは、魔道具は多少の傷や汚れは自然と消えていきますが、魔力のほとんどが失われた場合、そういった力も働かなくなり、徐々に錆び付いたり綻びたりしていきます。

 ただ、その進行度合いは元々の素材のものとはだいぶん異なりますね。魔力を失って、ある時から一気に錆で腐って崩れていくような場合もあれば、力を失ってもずっとゆっくりと風化していく場合もあります。」


「イーオットさん、これはどうですか。」


針を、イーオットに返します。

”剥奪”してから。


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