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ハンマーでたたきつける

「魔力が残っていると、どうなるか…… おねがいします。」


ちょっと緊張してきました。

イーオットが、作業台のかたすみをゴソゴソしていたかと思うと、10センチほどの金属の針を持ってきました。

針といっても縫物に使うものよりはずいぶん太く、頭のない釘のような感じです。


「ここの様子をうかがっていたコソ泥から取り上げたものです。この魔道具を、解体してみましょう。」


「それは、どういう品物なんですか?」


「この針で刺されると、体がしびれるというものですね。毒と違って、傷つけられなくても効果があるようです。試してみましょうか?」


え、どうやって? と反応に困っていると、イーオットが、発動させた針を木の柱に向けて投げてみせました。

柱に刺さった針から、パシィ、という音と火花のようなものが起こって、柱の方には小さな焼け焦げが付きました。


「低位の雷精の類が封じられているようです。魔力自体は大したことがないので、これなら暴走させても大丈夫でしょう。」


「そ、そうですか? ちょっと、僕には加減が分からないので……」


「じゃあ、見ていてくださいね。」


分厚い金属の金床に無造作にその針を置くと、イーオットは壁際にぶら下げられていた大きな金づちを取り上げました。

頭の部分だけで何キロもありそうなその長柄の金づちを肩の上までひょいと振り上げて、インパクトの態勢です。


「え、そのまま叩きつけるんですか!?」


さっきまでの、イーオットの繊細なキャラはどこへ行ってしまったのでしょう。


砕けた欠片が飛び散るんじゃないか、魔力の暴走で爆風が荒れ狂うんじゃないか、そんな未来がまぶたに浮かびます。

思わず、金床の周囲を取り巻くように、防壁を展開してしまいます。


イーオットは、構わず金づちを振り下ろします。


キイィンッ!! 


澄んだ金属音が響いて、しかし防壁には反応はありませんでした。


イーオットは、金づちを壁に戻しつつ、僕の作った防壁を観察しています。


「ふむふむ、よくできた防壁ですね。水精の本質、”減速”の意味するところをよく理解しつつ、土精による固定もがっちりと効いています。

準備なしに展開したはずなのに、金床の大きさや、針が砕け散った後に飛びそうな方向と力の計算も、十分理に適うものです。すばらしいですね。

それなのに、魔道具自体にはそこまで詳しくないし、付与術も使えないんですか。」


「いやあ、すっかりお見通しですね。さすがイーオットさんです。」


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