表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/237

ダンジョンを出て

「何と言ったらいいのか、コーダは、これでよかったのですか?」


リュシーナさまから、多少の魔力を譲っていただいたので、意識がはっきりしています。


「えーと、僕も、こんな展開を予定していたわけではなかったのですが……。その辺りはまたあとでゆっくり。先ほど申しあげたとおり、戦いは、まだ終わっていないのです。」


リュシーナさまの手のひらに乗せてもらって、移動しています。

……ペンダントなんかにしてもらうのも、いいかもしれませんね。


「フロイデの石は、再びここの管理人に、してあげてください。今は魔素を失ってしまいましたけど、時間が経てば回復するでしょう。それまでは、この魔物達が面倒を見てくれるでしょうし。」


良さそうな木を選んで、リュシーナさまが付与を行います。

ミツルギ様から地竜に事情を説明して、世話をお願いしておきました。

今は苗木のような大きさですが、すぐに大樹へと育つことでしょう。


スミが、二代目となったフロイデの木に、深々と礼をしています。


「本当に、ありがとうございます。あなたがいなければ、私の自由は、ありませんでした。」


おお。スミが、あんなに素直に感謝の意を示しています。

それにしても、フロイデが、スミを助けるために身代わりになろうとするなんて、考えもしませんでした。

自由を失うつらさに、それだけ共感したってことなんでしょうか。


……僕も、あと少しで、イジュワールのものになってしまうところでしたけど。


フロイデには、また用件を済ませたら戻ると告げて、別れました。

軍や警備隊が外で包囲しているでしょうから、フロイデにお願いして、別の出口を一時的に作ってもらいました。

ある程度距離さえ置ければ、こちらは精霊術の達人が揃っています。

通常の部隊に探知されることなどありません。


ミツルギ様の言葉通りケーヴィンの工房に向かうと、そこにいたのは、ミステレンとシュッツコイでした。


スミが、ミステレンのもとに駆け寄って、抱きつきます。

ミステレンも、少し膝を落として、その懐に受け入れています。

感動の、再会ですね。

シュッツコイも、スミとミステレンを、一歩引いた位置から、少しまぶしそうに眺めています。


「スミ、無事に戻れて、本当に、良かった。コーダが、やってくれたんだな。イジュワールは。」


「こちらに。」

ミツルギが絶魔体の封を見せると、ほっとした表情で、きょろきょろと視線を泳がせる。


「……コーダは?」


リュシーナさまやケーヴィンの、困惑を隠せない表情に、ミステレンは不穏な空気を感じたようです。


「ええと……」


説明しかけたリュシーナさまを、制します。僕は自分で語れますし。


「ミステレンさん、僕は、ここです。色々ありまして、今は精霊石の姿になってます。」


リュシーナさまが、手のひらの中の赤い石、つまり僕を、示しました。


「えっ!?」

「なっ…!?」


シュッツコイも、一緒になって驚きの声を上げています。


「ま、まさか、コーダは、勇者、だったのか?」


「いえ。そういうわけではありません。勇者になったんでしょうか? 今のところ、自分では、石になってしまったことしか分からないんですが……。」


ケーヴィンが、補足してくれます。

「コーダは、イジュワールとの戦いの中で、自らに剥奪術を掛けたのだ。」


「ちょっと、待ってくれ……」

「はくだつ、じゅつ…? 人が、精霊に、なるのか?」


「僕も、初めての試みでしたから、詳しい話は、また後日、イーオットさんも交えて、お話ししましょう。あの方なら、いろいろ教えてくれそうです。」


「……コーダ、君は、知っていたのか。」


「何をです?」


「イーオットが、勇者の、生き残りであることを。」


「いえ。全然。……そ、そうなんですか!? いいんですか、そんなこと、みんなに話してしまって。」


「イーオットは、今まで、風穴で人目を避けながら、魔道具の精霊の世話をして過ごしてきた。

だが、今回の一連の事件の中で、夢魔の一族の、一部の面倒を見ると言い出した。

年も取らず、姿も変わらないのだ。他者と暮らすと決めたならば、近いうちに、勇者の生き残りであることも、明らかにするつもりだろう。」


「そんなことが……。」


「コーダが精霊石となったということが、どういう意味なのかは私にはよく分からないが、勇者と似た存在なのだとしたら、イーオットは、暮らしの案内をしてくれる、はずだ。」


「ありがたい、お話です。」

石なので、念話の言葉でしか表せませんが。


「ですが、まだ、僕にはやらなければならないことが、あります。僕の戦いは、まだ、終わっていないのです。そのためには、リュシーナさま、あなたのお力が、必要です。一緒に、ついて来て、いただけますか。」


「喜んで、お供、致しましょう。」

リュシーナさまが、優雅に礼をしてくれます。


「わた、私のせいで、コーダ殿は、そのような姿に、なってしまったのだ……。私にも、手伝わせてくれ……」


「ミツルギ様……。この度の作戦は、僕が指示したものです。あそこでミツルギ様が撃ってくださらねば、僕は意思を失い、イジュワールの憑依体となっていたでしょう。あなたは、僕の、心の自由を守ってくださったのです。むしろ、誇ってくださいよ。」


「わが師よ……。」

ミツルギ様は、なかなか顔を上げられずにいました。

が、残念ながら、今の僕には、そっと差し伸べる手も、出せないのです。


「ミツルギ様とシュッツコイさんは、帝都で報告することも色々とあるでしょう。僕の戦いも、帝都が舞台となります。まずは、旅の仲間ということで。」


ふるふると、ミツルギ様が頭を縦に動かし、そこに、目を赤くしたシュッツコイさんが、ポンポンと手を添えていました。

うんうん、温かな、光景です。


「あ、ケーヴィンさんも、必要なので、来てくださいね。」


「おい、俺だけ、なんか扱い違うんじゃないか?」



終盤につき、連投しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ