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コーダからの依頼

膨大なエネルギーが光と熱を生み、次の瞬間にそれはさらに爆風と衝撃波に姿を変え、横たわっていた人形は、巨大な火球に包まれた。


「コーダ! コーダ! コーダ!」


リュシーナが、狂ったように叫びながら接近を試みるが、身にまとった耐性隔壁さえも高熱を遮り切れない。


「うぅっ…… ミ、ミツルギ、ミツルギ、どういうつもり!?」


リュシーナは、ミツルギに向かって殺気を浴びせかけた。


「……コーダ殿は、相打ちを、狙われていたのでは。」


ミツルギは、緊張感を漂わせながらも、静かに語った。


「あ、相打ちって、何を言っているの。あなた、そんな簡単に!?」


「コーダ殿は、このような状況を考えて、蘇生の秘術を、準備していたのではなかろうか……。」


「そ、そせいの秘術?」


「そうだ。コーダ殿は、勇者、なのだろう?」


「え? ど、どういうこと……?」


「勇者には、蘇生の秘術がある。コーダ殿は、高位の教会の精霊をも、従えていた。

どのような方法かは存ぜぬが、魔素を用いて、その肉体を再び蘇らせることができるならば、このような相打ちの戦術も、可能なのでは。」


「コーダが、勇者……。魔素で、肉体を、蘇生できる……?」


初めて耳にする事実に、リュシーナは、打ちのめされた表情をしている。


幼い頃からの姿を知っているはずの自分と、そのような秘密を知らされていたミツルギ。

立場の違いも、感じていた。

それ以上、何を言えばいいかも分からなくなって、口を閉ざした。


だが、声が聞こえていたケーヴィンは、いぶかし気な声を上げている。


「コーダが勇者……? そんなはずは、ねぇけどなぁ。」


「ケーヴィン師、なぜでしょう。」

ミツルギが、問いかける。


「俺は話を聞いただけだが、お前さんと一緒に修行をしていた時は、魔素を大量に集めていたんだろう? もしコーダが勇者だったら、お前さんの魔剣と同様、魔素を吸収して成長していったはずだ。だが、コーダが魔素を吸収したとか成長したなんて話は、聞いてねぇ。」


「え? ああ、確かに。魔素は、意識しなくとも、勝手に魔剣に集まってきていたが、コーダ殿の方へは、集まっていく様子は、なかった……。」


「コーダが、勇者だというお話は、本人に、聞いたのですか。」


「本人との、やり取りの中で……、んん? 私の、勘違いだったというのか……?」


「か、勘違いって……。確かに、コーダは、いつも、皆に、勘違いをばらまいて、振り回して、自分も、思い込みで、後先考えずに行動して……」


リュシーナの言葉は、錯乱していく。


ケーヴィンは、くすぶる残骸を前に立ちすくみ、ミツルギも、自分のしたことを、改めて受け止め、顔色を失っている。

高熱の起こした上昇気流が、皆の周囲から、冷たく感じる風を、集めていた。


そこへ。


「……リュシーナさま、まだです……。まだ、戦いは、終わっていません……。」


皆に、ささやくようなコーダの念話が届く。


「コーダ……? コーダ!? あなた、こんな超焦熱に耐える術を、持っていたというの!? もう、だったら、そう言ってよ!」


「……ふふ、そんな高度な隔壁の術、僕には扱えませんよ……。ここからは、あなたの力が必要です……。」


「え?」


「……ミツルギさん、騙したみたいになってしまって、すみません……。でも、言った通りにしていただいて、ありがとう、ございました……」


「ど、どういうことだ、コーダ殿! 何が起こっている? 無事では、ないのか!?」


「無事……ではないですね。……まずは、僕達を、回収してください。」


「あ、ああ。私ならば、多少の熱は、問題ない。」


ミツルギを先頭に、歩き出す。

周囲を包んでいた煙が、ようやく吹き流された。


霊樹の憑代の残骸は、魔道具としての機能を失い、微精霊や魔素へと、散り散りになって還っていく。

爆心地付近に、まともに原型を残しているものは、見当たらなかった。


ケーヴィンが、叫ぶ。


「なんだ! どうなってんだよ。コーダの声が、念話が聞こえるのに…… か、体は、消し飛んじまったってのか……?」


「ケーヴィンさん……、精霊石がいくつか、遺されている、はずです。」


「あ? そうか! ミツルギ様の雷撃は、ダンジョンの力。身体が吹き飛んだとしても、精霊は、死にはしない。精霊石として、その辺りに埋もれているってことか。」


「身体と一緒に……魔力も吹き飛ばされてしまったので……、探知は面倒でしょうが、お願いします……。」


煤や灰にまみれながら、手分けして、捜索を行う。


魔力を残していたアビスマリアの巨大な精霊石や、サー・エリク達コーダの魔道具の精霊石は、すぐに発見された。

イジュワールの、黒いメノウの石は、絶魔体で慎重に封じられた。

フロイデの種のような石も、回収された。


そしてもう一つ、小さな、しかし鮮烈な光を放つ赤い石。


「コ、コーダ……?」


リュシーナは、呆然とその美しい精霊石を目にしたまま動けない。


ケーヴィンが、大きく口を開けて、しかし、かすれた声で言葉にする。


「コーダ、あの野郎、自分自身を、『剥奪』しやがったんだ……。」







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