精霊術の想い出
そうそう、火精の術と言っても、火を扱うだけではありません。
火精の本質は、加速。
マナを使って物質を構成する粒子を加速してやれば、熱を帯び、やがて炎を発します。
向きを揃えて加速してやれば、その物体は動き始めます。
火球、炎槍、火炎嵐。
先人が形を調えてくださった色々な術がありますが、術の形を離れてからが本番です。
僕も色々な形を自在に作れるようになるまで時間がかかりましたが、それ以上に、ほどほどに失敗しながらも着実に成長している感を演出するのに苦労したものです。
火炎嵐を見せたとき、教師だったきれいなお姉さん魔女が抱きしめてくれたことは忘れられません。
あれは、火球の形を操作して火炎嵐に見せかけたものだったんですけどね!
先生の火炎嵐にそっくりな感じで仕上げたら、「あなたはわたしの最高の弟子です」「わたしの生涯を背負っていける」って言ってもらえました。
存在自体、消されてしまってすみません。
普通の術は、不自由しなかったんですけどねえ。
そして、付与術が使えないことがわかってから、付与術の代わりにならないかと挑戦していた道具を使っての術。
魔力を送り込んでいくと炎を噴き出して空を飛ぶ石の筒とか色々考え出したんですけど、帝国の五精家としては、やっぱり「術者でなくても使える」ってことが絶対なんですよね。
術の力を持たない帝家の血統と、それを支える五精家。
どれほど五精家の力が大きくなっても、付与術が術を使えない者のためにあるという誓いは変わらないのです。
おっと、術のことになるとついつい熱が入ってしまいます。
イーオットのことを言えませんね。
それに、五精家は、僕にはもう関係のないことでしたね。
ぐすぐす。
炉の前で想い出にひたっていた僕に、イーオットが声をかけてきました。
「炉に興味があるみたいですね。じゃあ、魔道具の素材を溶かして取り出す作業からやってみせますよ。」
「あ、はい。」
ワクワクしてきました!




