魔道封術兵団
昏き函の空間の中に、様々な形の魔道兵器が、立ち並んでいます。
私を、取り囲むように。
人や獣の形を取るもの、武具の形を取るもの、神秘的な姿のもの、一見は兵器とも思えないもの。
魔王討伐戦争時代に帝国中で用いられていた様々な魔道兵器が、作り変えられ、組み合わされて、今ここに集結しているのです。
……私専用の、魔道兵器群として。
いつの間にか、ケーヴィン師もいらして、コーダ様と詳しい打ち合わせをしています。
「自律して稼働可能な魔道装甲やゴーレムタイプを中心に、武装タイプの魔道兵器を割り付けています。陸戦型を中心にタンク役二小隊、術式回避用のデコイ役二小隊、偵察監視用の空中稼働役二小隊、肝心の封術役は三小隊、全部で九小隊の編成ですね。」
「個々の小隊の属性やスキルの組み合わせも吟味して調整したいところだが、さすがにその時間はないか。」
「そうですね、命令系統に関しては、暗号化した魔道通信で常時多重接続が可能ですが、戦術機動の訓練もできませんから、最適運用を前提に効率を求めすぎると、かえって実働性能は落ちてしまうでしょう。ある程度は、単なる飾りになってしまっても仕方がありません。」
「魔力供給は。」
「それぞれの魔道兵器にも、ある程度の蓄えはありますが、基本的には魔杖の『災厄』から直接的に逐次供給します。個々の魔道具の状況を把握して送り込むのは、いくらリュシーナさまが有能でも、負荷が大きいでしょう。」
「アビスマリアさんが、戦術指令補助装置として使えれば、有能なんだろうがな……。」
「残念ながら、イジュワールに深く関わったことのある存在は、今回の作戦には使えないんですよ。どこに何が仕掛けられているか、分からないので……。
ま、イジュワールを封じたら、その後に、改めてゆっくりセッティングを詰めましょうよ!」
「おいおい、気が早いな。いくらこの封術兵団が帝国史上最強の存在だといっても、浮かれすぎじゃないか、コーダ!」
「ふふふ、ケーヴィンさんこそ、絶魔体繊維の投げ網擲弾や隠蔽散幕、魔道装甲用の武装懸架装置、あっという間に作ってくださって、ありがとうございます。一目見ただけで、かゆいところに手が届くのは、さすがです!」
「はっはっは、もっと褒めてもいいぞぉ! ここの魔道兵器達のことは、よく観察していたからな。今回の重付魔改造で、どれくらい変わったか、確認するのが楽しみだな。
おっと、稼働記録は複数チャンネルで収録しておくからな、後でじっくり反省会だ!」
何を話しているのかよく分かりませんが、男同士、なんだかとっても楽しそうですね。
私はといえば、魔道兵器の小隊長さんから、その能力について、順にレクチャーを受けているところです。小隊長さんといっても、もちろん、魔道兵器の精霊のことです。
魔道通信網の復旧の際に、イジュワールがもともと構築していた通信や移転憑依のための術式とは別に、「精霊の絆」と名付けた術式を設置してあります。この機能を介せば、接続されている魔道兵器の精霊と、距離を問わずに、その視界や感覚を共有しながら、直接対話ができてしまうのです。
ただ、人型や獣型の魔道兵器が話しかけてくるのは、まだ分かるのですが、その装備している盾や胸元に張り付けられた徽章一つが独立した立派な魔道兵器だったりして、誰が話しかけてきているのか、戸惑ってしまうこともあります。
何と言いますか、コーダ様達風に言えば、指揮官である私自身の認識の拡張が必要ということなのでしょう。




