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夢魔の一族との対峙

「その中で、一人だけ、帝国と戦うのではなく、禁忌の術によって帝国そのものに食い込んでいった者がいたのです。」


シュッツコイは、身じろぎもせずに、聞いている。


「その者は、自らの肉体を捨て、様々な精霊や生きる人間に憑依する術を作り上げたと言います。

いうなれば、人の、精霊化だったのでしょうか。」


「ひ、人が、精霊に……?」


ミツルギが、眉をひそめてイーオットを睨む。


「むろん、どんな精霊や人間にでもできるというわけではなく、条件を満たす対象の選定や事前の術式の準備は、非常に大きな労力を要したはずです。

とにかく、帝国を運用するための魔道具や人員の中に、その者の憑依によって管理されるものが秘密裏に入り込み始めました。おそらくそれらの魔道具も人員は、非常に優秀な成績を示したことでしょう。」


「優秀な、成績ね……」


シュッツコイが、呟く。


「つまり、夢魔の一族は、血統なのか施された術式なのか分からんが、その憑依体として適性の高いよう選ばれて育てられた人間というわけか。

あの、イジュワール様に。」


イーオットは、シュッツコイの顔をちらりとのぞき込んだ。


「ほう、そちらの手の者だったのですね。」


シュッツコイが、ニヤリと笑う。


「だとしたら、どうする。」


イーオットは、涼し気な微笑みのままだ。


「どうも、しませんよ。そちらが、ここを立ち退けなどというのでなければ。」


「立ち退け? 我々は、そんな任務は負っていない。」


「そろそろ、そんなことを言い出す方々が現れる頃合いなのですよ。面倒ごとを、持ち込む方々が、ね。」


「どういうことだ……?」


シュッツコイが怪訝な顔をしていると、ムクチウスが、工房の片隅から、金属のツルハシを持ち上げるのが目に入った。


「おっと、噂をすればなんとやら。いらしたようですね。」


ズン、と地響きが伝わってくる。


「封路に引っ掛かった魚が、いますね。」


イーオットも、いつの間にかその手に杖を携えている。


「それに、仕掛けを食い破ってしまう、困った魚も。」


ミツルギもシュッツコイも、立ち上がる。

何かの気配が、結界をこじ開けている。


ブワっと空気が引っ張られるような感覚が広がり、結界が消滅する。


シュッツコイが、呟く。


「破精術か……」


「ですねぇ。」


イーオットが、応える。


咆哮のような、大声が響き渡る。

歪んで見える空間の狭間から現れたのは、粗暴な風体の大男。


「風穴の管理者よ、出てこい!!」


イーオットが、静かだが、通る声で語りかける。


「先ほどから、言っておろう。

風穴の精霊も、管理者も、すでにこの地より去った。

風穴は、失われたのだ。」


「我ら夢魔の一族は、風穴の管理者。そのような事態は、認めぬ。」


イーオットは、シュッツコイとミツルギに、苦笑して見せる。


「認めないのは勝手ですがね。実際に消えてしまったものは、どうしようもありませんよ。

……夢魔の一族よりの来訪者よ、いったい何を望むのか。」


「風穴が失われたというのなら、その中に収められていた魔道具を、引き渡してもらおう。」


「風穴の中の魔道具は、人間には扱いの難しいものだった。融合魔石の暴走を、風穴の精霊が封印していったと聞いている。その封を解くは、容易なことではない。封を解いたとて、暴走する融合魔石の魔力を浴びれば、なまなかな魔道装甲など、たちまちのうちに腐り落ちるが関の山だぞ。」


「ならば、この家屋敷と農園を、夢魔の一族の名において接収する。」


「悪いが、これは我らが譲り受けたもの。少しばかりの愛着もある。そちらが何者であろうと、簡単には譲り渡すわけにはいかぬ。」


「ほざけ。いつの間にやら入り込んだコソ泥が、我が物顔で何を言うかと思えば。」


「少しばかり数が揃っているからといって、それで推し通れると思ったら大間違いですぞ。

あなた方は、すでに死地に踏み込んでいるのですから……。」




評価が五百を超えました!


このところ、だいたい毎日一件くらいはブックマークしていただけるようになりました。


アクセス解析など見てますと、新しく読み始めた方は日に十人くらいなので、読んでみた方の十人に一人はブックマークしてる計算でしょうか。


そう思うと、結構やる気出ますね。

あまり山のない感じで進んでますが、物語後半に入ってます。

もうしばらく、お付き合いください。



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