地上へ
入り口の扉まで戻ってくると、イーオットが袋から先ほどの魔道具を取り出しました。
扉の近くの壁に掌を押し当てて、何かの術を使っています。
「これは、何をしているんですか?」
隣に立っていたミステレンに訊ねてみます。
「魔道具の持ち出しの手続きだよ。
そうそう、中の品物を勝手に持ち出すと、この風穴の守護装置が発動しちゃうから、気を付けてね。」
へー。
くわしく仕組みを知りたいところですが、あまり細かく質問すると、あらぬ疑いを持たれそうです。
あるんですけどね。
「守護装置ということは、門番みたいなものが出てくるんでしょうか?」
「階層ごとに色々な仕掛けがあるんだ。だいたい、深いほど強力で、個別の部屋に置かれていることもある。
門番みたいなのもいれば、罠みたいなものもあって、ここは最上層で扉があるから、ロックされて警報が鳴るだけだけどね。」
イーオットも、振り返って補足してくれる。
「階層をまたいで上に持っていくときにも手続きが必要ですから、最初のうちは勝手に魔道具を動かしてはいけませんよ。」
気になるので、聞いてしまおう。
「魔力が無くなっても反応するというのは、道具自体が登録されているのですか?」
「そのとおりです。魔力が無くなった後の素材にも価値があるので、それを狙って泥棒が入ることはありますからね。上層は、下層ほど警備も厚くないですし。」
ミステレンが肩を叩いて扉へ促します。
アラクレイが、扉を開けて待っているのです。
「仕事を覚えていったら、コーダ君も登録してあげるよ。でも、下層に行けるようになろうと思ったら、色々鍛えないとね。」
はしごに取りつきながらも会話は続きました。
「やっぱり、下層は危険なんですか?」
「下層が危険というより、権限があると知られたときに、盗賊に狙われるからね。ある程度、自分の身を自分で守らなきゃならないのさ。」
「へー。ということは、スミさんも腕に覚えがあるんですか。」
「うーん。スミは、戦いの方はまだまだ修行中だけど、仕事の関係で下層まで行かなきゃならないから。
スミを護るのも、僕らの大事な仕事のひとつだね。」
はしごを上りきると、スミが、ミステレンの上着の裾をしっかりとつかんでいます。
余計な話題を向けるなという警告を感じる目線ですね。
外に出ると、日差しがとてもまぶしく感じました。