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破精部隊

リュシーナさまが、その整った薄い唇に、かすかな笑みを載せながら語っていきます。


「破精部隊は、存続の危機に瀕しているわ。あるいは、もはや崩壊してしまったのかもしれない。イジュワール様がお隠れになったと同時に、その結びつきも失われてしまい、隊員同士の連絡さえままならない状況となっているそうよ。」


えーと、破精部隊が何かもよく知らないんですが、存続の危機なのですか。

先ほどのお話だと、その破精部隊とやらは、僕の力を狙ってくる可能性があったんでしたっけ。


「僕を追うことは、もう無いのでしょうか?」


「それは分からないわ。隊の幹部は、改めて帝室に忠義を尽くすことが確認されているけれど、残党がどう動いているのかも、不明だそうよ。それに、コーダ様の力を危険視していたなら、幹部としても放置できないでしょう。」


「とにかく、破精部隊の関係者には、僕の力を知られないようにしないといけないのですね。」


「もちろんよ。」


剥奪の力について知られると、僕の力を利用しようとする輩が出てくるだろうとは思っていましたが、もう少し事態は深刻だったようです。

剥奪の術でなくとも、破精の術の使い手というだけで、それだけ追われることになるだなんて。


「黒の系統の術は、それだけ重要なものなのですか。」


「私も、詳しいことまで知ってるわけじゃないわ。ただ、勇者の存在と、深い関係があって、帝国はその術を厳しく囲い込んでいると聞いてるだけ。」


破精の術は、魔道具や精霊の力を破壊するものというくらいに思っていましたけど、もっと何か役割があるんでしょうか。


それにしても、今までのところは、僕の力を秘密にしておいてくれる仲間たちで幸運だったと考えないといけないということですね。


「破精部隊というのは、もし狙われたら、どのくらい危険な存在なのでしょうか。」


「秘密の組織だから、その力は明らかになっていないけれど、聞いた噂によれば、大型の魔道建築を丸ごと叩き潰すように破壊する術者もいるそうよ。」


「建物を、丸ごと破壊するんですか…… そんなことしたら、精霊の暴走で大変なことになりますよ。」


「そうならないから、破精術は特殊なのよ。単なる破壊ではなく、精霊の力を消滅させてしまう。」


「では、精霊術や魔道具で身を護るのも難しいということですね。……もし遭遇しそうになったら、一目散に逃げることにしますよ。」


と、ここまできて、決断しなければならないことが一つ。


目の前のリュシーナさまに、剥奪術のことを、話すかどうか。


剥奪の術という加護の名を聞いているリュシーナさまでさえ、魔道具から精霊を抜き取って結晶に戻すなどという力は、想定していない様子です。

僕とリュシーナさまが組めば、ものすごく色々なことができます。


ただ、僕からリュシーナさまと敵対したいとは思いませんが、大人には大人の事情があるでしょう。

僕の術のことを知ってしまったら、立場上、僕の意に沿わないことをしなければならないこともあるはずです。

かえってリュシーナさまを苦しめたり、僕が苦しむことになるかもしれません。


力にはなるけれど、今は、秘密にしておきましょう。


「どうやら、覚悟が決まったようね。」


おっと。

期待されているものとは少し違うような気がしますが、そのクールな微笑みに、微力を捧げることにしましょうか。


「ちょっと! もしもーし! そこの! なに二人の世界に入ってるのよ! あたしの声、聞いてたでしょ!! ねえってば。」


杖の中から叫んでいる声もありますしね。


さて。

剥奪の力を悟られずに、僕にできることは……





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