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自称継承者

「ボタクリエ商会の者だな。私は魔杖の継承者、修行の手配を依頼したい。」


何ですか、今日は忙しい日って奴ですね。


声が聞こえてくるのは、僕の顔と同じくらいの高さ。

主は、可憐なドレスに身を包んだ、きりっとした貴族の少女。

相変わらずの、お美しさで。


「これはこれは、リュシーナさま。平和のための歩みにいらしていたとは。」


「おや、なんと、そちらはコルダ殿ではありませんか。確か、土精家の公女にお供して、長い修行の旅に出たとお聞きしておりましたが。」


こんな背後まで接近しておいて、なんとって。

おっと、目つきも口元も、何だか剣呑って雰囲気を漂わせてますよ。

それに、手元の魔杖とやら、そのドレスにはどう見ても不似合いな禍々しい姿かたちなんですが。


「ええ、幸いなことに、ミツルギ様の修行が、思っていたよりも早く実を結びましたので。」


にっこり。


「そうですか、そうですか、それは良うございましたね。商談会の次の日には姿を消していたものですから、てっきり誰かの都合が悪くなって帝都から逃げ出したのかと思ってしまいました。」


「滅相もない、誤解でございますよ。あくまでお仕事ですとも。」


「お仕事、ですか。土精家の公女の唐突な武者修行、持ち掛けたのはボタクリエ商会の方だとか?」


「ええ、あの魔剣は、ちょっと特殊な魔道具でしてね。修行の方法も、特別なものだったんですよ。たまたま、我々の方でその修行の場について、情報がありましてね。良い商売をさせていただきました。」


「ああ、そうですか。お互いに成果を得られたようで、何よりですわね。土精家の公女も、コルダ殿には大変な謝意を表していたとか。」



ああ、先ほどの。

ジトっとした視線。

見てたんですね。

あれは、僕にも謎なんですが。


……なんでしょうね。

何か良くない気配を感じますね。




「おい、どうなってんだ。」


アラクレイが、念話で話しかけてきます。


「え…… 何でも、ないですよ。この方が、僕の正体を見抜いたもう一人、なんです。」


「そういうことじゃねえよ。魔杖の継承者って、この子も修行に連れ出すのか?」


「いや、元々騎士見習いで家を出る予定だったようなミツルギ様とは、立場が違いますよ。水精家の本命中の本命、ここ数代の中でも飛びぬけた力を持つ術者なんですから、今さら修行も何も。」


おや、あちらの方から、リュシーナさまを呼ぶ声が。

お供の方々を、振り切って来たのでしょうか。


「リュシーナさま、魔杖の継承者とは、どういうことでしょう? 水精家に伝わる家宝といえば、鏡や盾、羽衣などとお聞きしておりますが。」


「魔剣と同じように、誰にも扱えずに封じられていたものが、私の下で、目覚めたのです。

御覧なさい。」


魔杖が、脈打つように光っています。

暗黒属性の見た目とは裏腹に、割と清らかで綺麗な輝きですね。

癒しや守りの加護がありそうな気配です。

ああ、危険なものでないならいいんですが。


あ、お供の方が追いついてきました。


「お嬢様! どうしたのですか、いきなり杖を持ち出されて。」


聞こえないふりで、リュシーナさまは続けます。


「そう、つい先ほど、この催しの場で。」


「え? 供出するはずの魔道具が、突然に、リュシーナさまに反応したということですか。」


「そうなのです。しかし、私には、まだこの魔杖を使いこなすことができていません。修行が、必要なのです。」


「いや、修行と言われましても、どのような魔杖かさえ存じ上げませんが……」


お供の方々の方を見て、助け舟を求めてみますが……

こうなったお嬢様は手が付けられない、というのが皆さんの表情から見て取れますね。


魔杖が反応したというのなら、魔杖の精霊の声を聞いてみましょうか。

周りの雑踏がうるさいので聞き取りにくいのですが、何か言ってますね。


「……リュシーナ、リュシーナ! やばい、やばいってコレ! どーすんのよぉ! こんなの目を覚ましたら、あたしじゃどうにもなんないよぉ!?」


んん?



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